早く逮捕しないと

 家事はもちろん、航平さんの成長記録には細かく書き込み、アルバムもこまめに作成。そのまめさには悟さんも驚いたという。

「(事件前の)10月はいい月だったんです。奈美子の子どものころからの夢だった赤い車も購入し、ずっと行きたがっていたディズニーランドにも家族で行けました」 

事件の1か月前には念願のディズニーランドへ行ったばかりだった
【写真】幸せに包まれた家族写真。平穏な生活は突如、何者かに奪われ……

 奈美子さんの高齢の実母と同居、2人目の子どもも見すえてマンションも購入した矢先に事件は起きた。

「息子の成長を見られなかったことはさぞ悔しかったと思います。奈美子は高校野球のファンだったんですが、彼女が応援していた学校に実は息子が入学したんです。一緒に学校見学に行ったり、野球部の応援に行ったりすることもあったかもしれません。……息子は当時2歳、母親の記憶はほとんどありません」

 アルバムの中で微笑む母。奈美子さんの遺骨は納骨されておらず、悟さんと航平さんが暮らす家に安置されている。

「私たちは中途半端な遺族なんです。犯人が捕まっていないからどうやって犯人を憎んでいいのか、わからない。相手が見えていないので透明人間みたいなんです。……被害者遺族は家族の命だけでなく失われるものが多すぎるんです。被害者にならなければわからなかった……」

 事件から20年、悟さんが危惧するのは犯人の寿命だ。

「70代くらいになっている可能性があります。早く逮捕しないと時間がない。現在、時効は撤廃されていますが、寿命には限りがあります。犯人しか知りえないことが知りたいんです。あの日、何があったのか、何でこんなことになったのか。本当のことが知りたい」

事件現場となったアパート

 犯人はあの日、何を思い奈美子さんに凶刃を振りかざしたのだろうか。

 愛知県警の捜査関係者は、

「今年はメディアに多数取り上げられたこともあり、42件の情報提供があるが例年、横ばい。犯人の特徴に似た人を知っていたら情報提供をしてください」

 と呼びかける。

(取材・文/当山みどり)


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