セットは撮影所から丸ごと移転

 入館口にはさっそく、看板文字の取りつけ作業中の寅さん像がお出迎え。でも、下を見るとアララ、雪駄落ちているよ! どちらの足にはいていたものかよ~く見ておくと、後々にいいことがあるかも!?

「寅さん記念館」で看板を取りつける寅さん像 撮影/齋藤周造
「寅さん記念館」で看板を取りつける寅さん像 撮影/齋藤周造
【写真】「寅さんサミット」で再集合した山田洋次監督、さくら役の倍賞千恵子

 15のテーマごとに展示される館内で、数々の名シーンを生んだ『くるまや』のセットは必見。だんご屋の店構えから内装、客席、茶の間など、劇中に入り込んだかのようなリアルさ。それもそのはず。

「実際に、シリーズの撮影で使用していたセットを、大船撮影所からそのまま移築した本物です」(井上さん)

 画面にほとんど映らない調理場なども細部まで作りこまれているあたりは、山田監督の映画製作へのこだわりだ。

 ほかにも貴重な衣装や台本を展示する資料館の役割を担う一方で、寅さんと「記念撮影コーナー」や、名場面集、クイズなどのエンタメ要素も充実。

 昭和30年代の帝釈天参道を再現したジオラマや、帝釈人車鉄道に乗車体験できるコーナーは、小学校の社会科見学にも使われるそう。実際、親子3代で来館する姿も見かけるなど、世代を超えて楽しめる記念館だ。

昭和30年代の「帝釈天参道」をイメージしたジオラマ。細部まで作りこまれている 撮影/齋藤周造
昭和30年代の「帝釈天参道」をイメージしたジオラマ。細部まで作りこまれている 撮影/齋藤周造

《私生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い》

 渥美清さんが歌う主題歌でもおなじみの、“聖地”巡礼に欠かせない『柴又帝釈天』。広報担当の須山保さんは「この50年間、観光のお客様が増えた」と振り返る。新作公開で、さらに参拝客が増えるだろう帝釈天の、お参り作法をあらためて伺った。

「まず門をくぐる前に合掌します。境内は、左側通行が一般的で敷石をたどればご神水で手水をして、正しい順路で参拝できます。お帰りの際は、門を出る前に(帝釈堂に向かって)再度、合掌するのがマナーになっています」

 この帝釈天から柴又駅方面まで続く、劇中でもおなじみの参道をしばらく歩くと見えてくるのが、木造瓦葺きの風情残る『高木屋老舗』。柴又名物草だんごなどの甘味や食事を提供する同店は、『男はつらいよ』と縁が深い。