テレビ業界にはびこる“タレハラ”の実情

 しかし、これまで彼のキャラクターといえば、「テレビで大豪邸を披露するけれども収入源は謎」であったり、「肉体管理に余念がなく、1日1食、炭水化物を抜いた食事を専属シェフに作らせている」という逸話を持っていたりと、ミステリアスさに包まれ続けてきた。だからこそ“58連勝”もなんだか板についていたわけで。芸能界でここまで“ミスターパーフェクト”な感じが務まる男はGACKTしかいないってほど唯一無二の存在の彼が、実は「クラスで1番の成績を取るために猛勉強しているマジメな生徒」だと知ったらどうだろう。視聴者の見方も変わってしまわないだろうか。

 確かに彼の勉強家(?)な一面は、過去の雑誌のインタビューからも垣間見えていた。

iPhoneには説明書が入ってないだろ? あのときにはやっぱり衝撃を受けたよ。ボクは基本的にドコモフリークだったから、新しい商品が出るたびにドコモの説明書を端から端まで読んでいたんだ。でも今はもう、説明書が不要な時代》(『SPA!』'15年6月16日号)

 新商品とてまるっきり使い方が変わってしまうこともないだろうに、“端から端まで”読んでいるのである。ドコモ側もまさか全部読む客を想定していなかっただろう。GACKTの“知への欲求”がほとばしりすぎている。 

 話は戻る。そんなストイックさでこれまで頑張ってきた彼が『格付け』から「勝って当たり前のプレッシャー」を与えられて、「やめたい、ストレスでしかない」と言っているのだから、素直に辞めさせてあげればいいと思う。『働き方改革』が叫ばれる昨今において、「盆栽の勉強をせざるをえない状況に追い込む」というのはもはやハラスメントの一種なのではないだろうか。高視聴率を叩き出す人気番組だからといってタレントに必要以上の努力を求めすぎてはいないか。

 もし「58連勝」というのがものすごい重圧なのだとしたら、「一度負けさせる」ことでプレッシャーから解放させてあげるという手段もあるかもしれない。かつて『女性自身』に掲載されていた彼の自伝的連載で苦手なものについてこう語っている。

《父親の車は、いつも非常にキツイ香水の匂いがして、車酔いのひどかった僕には拷問のようだった。必ず酔う。酔って気持ちの悪いときに流れてくるのが演歌だった。早く車から降りたい。僕は耳を塞いでそれだけを念じていた。演歌が流れるだけで、条件反射で気持ちが悪くなった。僕は演歌が大嫌いになった》('03年4月15日号)

「細川たかしとのど自慢の一般人、演歌聴き比べチェック」とかいう項目があったら、連勝も止まるんじゃないか。二択を当てちゃうかもしれないけど。

〈皿乃まる美・コラムニスト〉