<行動・習慣 編>

実行力がない→自分の行動を予言する!

「今年こそはあれをやるぞ!」と、あれこれ思い浮かべてはみるものの、いざ実行するとなると、自信がないし、面倒くさいし、具体的な手段は浮かばないしで、ぜんぜん行動に移せない……そんな自分を変えるには?

 アメリカの社会学者・マートンが、『予言の自己成就』という現象を提唱しています。これは、たとえ間違った予言であったとしても、その予言を信じることで実現してしまう、というもの。「きっと失敗する」と思い込み、努力をすべき時間をクヨクヨしながら浪費してしまい、結局、失敗してしまうような場合がこれにあたります。

 この『予言の自己成就』をポジティブに変換して使うことが、「実行力がない!」と悩む人にはいいかもしれません。

 例えば、「プロジェクトAは今期中にスタートするよ」「私、ダイエットがうまくいっていて、あと1か月で3キロはやせそうなの!」と、やるべきことを自ら予言するんです。

 さも予言者のように明確な未来や目標を述べると、それに向かって具体的に努力したり、目標を知った周囲の人が手助けしてくれたりすることで、本当に実現できる可能性が高まるからです。

 また、これには『パブリックコミットメント』という効果も働きます。周囲に対して自分の意見や立場を明確にする、つまりパブリックな形でコミット(意思表示)すると、一貫した人間に見せようと努力し、そうなろうとする意識が強く働くのです。

 行動力がないと自覚する人は、まず予言です。「海賊王になる」「秒速で5億円を稼ぐ」「私、失敗しないので」と高らかに言い放ち、おのずと行動できる人を目指しましょう。

三日坊主→やったことを数字で記録!

 いざ実行に移せたとして、さらなる敵は“続かない問題”。3日で終わったジム通いに英会話、禁煙に朝活……。いわゆる“三日坊主”とどう戦うかは、人間の永遠のテーマかもしれません。

 なにせ人間の脳は飽きっぽくできているので、継続力がないのはむしろ自然のこと。脳では、さまざまな事柄に適応しようとする『馴化(じゅんか)』という作用が起こります。馴化とはいわば“マンネリ化”で、物事にいちいちトキメキを感じなくなる、ということ。

 物事が目新しいうちは『報酬系』と呼ばれる脳の回路が働き、快楽物質であるドーパミンが分泌され、脳も活性化するのですが、やがて馴化が起きてしまうと報酬系は働かなくなります。この報酬系が、三日坊主を脱却するカギを握ります。

 香港中文大学のシェンとシカゴ大学のフシーは「無意味な報酬に人間はどう反応するか」を調べました。実験では、被験者にパソコンを使った作業を指示。画面上には常に“謎のスコア”が表示され、作業を終えるたびに、スコアがランダムに増加します。

 ただ、「そのスコアに特に意味はなく、作業を評価しているわけでもない」ということに、被験者の多くは作業の途中から気づいていました。

 一見、無意味に表示されているだけのスコア。しかし、この謎のスコアが速く上がるほど被験者のモチベーションが上がり、スコアが増えないときは作業効率も下がる、という結果が出たのです! そう、「無意味な数字が脳への報酬として働いた」のです。

 三日坊主なあなたは、この“謎のスコア方式”を応用し、「行動を数字で記録」してはいかがでしょうか? 数字を脳のご褒美にするのです。

 ダイエットで体重の経過をつけていくことは定番ですが、停滞期に入って体重が減らなくなると、数値も変化せず、脳が喜ばなくなり、モチベーションが低下します。このやり方では、ただ行動と結果を記録しているのみです。

 “謎のスコア方式”は、例えば、「ジムに行ったら1」「1km走ったら5」「スクワット50回は10」のように自分で決めたポイント数を記録するので、体重が減っても減らなくても関係ありません。

 もっとシンプルに、「ダイエットに繋がる行動をしたらカレンダーにマルを書く」だけでもOK。31個のマルがたまっていくことで報酬系が刺激され、脳がうれしいと感じるので、続けられるのです。これは、「人間は一度始めたことが途絶えると不快に感じる」という性質も利用しています。ソーシャルゲームの「ログインボーナス」と同じようなことです。