「孤独死を身近な問題と感じる」高齢単身者は5割超

 孤独死に関しての公の資料は少ないが、内閣府が閣議決定した『令和元年版高齢社会白書(全体版)』によると、高齢者孤独死の数は年々増加している。

 東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内におけるひとり暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成29(2017)年に3333人だった。平成28(2018)年の3179件と比べると、過去最多を記録している。このデータを見ると、平成15年の1451件から、ほぼ右肩上がりで上昇していることがわかる。そして孤立死(孤独死)を身近な問題だと感じる人の割合は、60歳以上のひとり暮らし世帯では50.8%と5割を超えている。

 また、孤独死の後始末を行う「事件現場特殊清掃士」などの特殊清掃業者の数も増加していることから、孤独死も年々増え続けていると予測される。

 長年、孤独死の取材を行っているが、ご遺族の方にご本人の人生を聞かせていただくと、対人関係や仕事でつまずいた経験があるなど、何らかの「生きづらさ」を抱えていた人も多い。私自身、元ひきこもり当事者であり、今も「生きづらさ」を抱えている。亡くなった方とは趣味や性格や生い立ちなど、私と共通点が多く、共感することが多々ある。ご遺族も、そんな生前の故人の「生きづらさ」や「社会の抱える矛盾」を知ってほしいと取材に応じてくださることもある。

 現在、社会問題になっている8050問題(※80代の親が自立できない事情を抱える50代の子どもの生活を支え、親子が社会から孤立する問題)に代表されるような中高年のひきこもりが孤独死という結末を迎える日も遠くないし、実際にもう現場では起こっているという実感がある。かつてのひきこもりの自分も同じ結末を迎えていたかもしれないと思うと、切ない気持ちになる。

 間違えてはいけないのは、家でひとりで死ぬことが問題なわけではないということだ。病室でも風呂場でも旅先でも、ひとりで死ぬ可能性はいくらでもある。 「ひとりで死んだ末に長期間、誰にも発見されない」という事実の背後に浮かび上がる、一度崩れ落ちたら立ち上がれず、孤立や貧困を強いるような社会の歪(いびつ)さこそが問題だ。

 私もそうだが、誰もがみな、社会から脱落せずに生きていけるわけではないからだ。 国を挙げて、そして私たちの社会のひとりひとりの問題として、孤立、そして孤独死について向き合うときが来ているのではないだろうか。


<プロフィール>
菅野久美子(かんの・くみこ)
1982年、宮崎県生まれ。ノンフィクション・ライター。著書に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)などがある。最新刊は『超孤独死社会 特殊清掃現場をたどる』(毎日新聞出版)。また、さまざまなウェブ媒体で、孤独死や男女の性にまつわる多数の記事を執筆している。