『ガッテン!』に携わって13年の小澤恵美デスク(左)。がん治療に関する『NHKスペシャル』『クローズアップ現代+』なども制作してきた田村圭香ディレクター(右)。2人は、乳がん検診を呼びかける『ガッテン!』の放送回「86万人の自宅に届く!乳がんで死なないための切り札をあなたへ」(2018年9月5日放送。詳細は最終ページへ)も担当した
『ガッテン!』に携わって13年の小澤恵美デスク(左)。がん治療に関する『NHKスペシャル』『クローズアップ現代+』なども制作してきた田村圭香ディレクター(右)。2人は、乳がん検診を呼びかける『ガッテン!』の放送回「86万人の自宅に届く!乳がんで死なないための切り札をあなたへ」(2018年9月5日放送。詳細は最終ページへ)も担当した
【写真】大腸がんについて知っておくべき知識が凝縮されたリーフレットをチェック!
『ガッテン!』に携わって13年の小澤恵美デスク(左)。がん治療に関する『NHKスペシャル』『クローズアップ現代+』なども制作してきた田村圭香ディレクター(右)。2人は、乳がん検診を呼びかける『ガッテン!』の放送回「86万人の自宅に届く!乳がんで死なないための切り札をあなたへ」(2018年9月5日放送。詳細は最終ページへ)も担当した
『ガッテン!』に携わって13年の小澤恵美デスク(左)。がん治療に関する『NHKスペシャル』『クローズアップ現代+』なども制作してきた田村圭香ディレクター(右)。2人は、乳がん検診を呼びかける『ガッテン!』の放送回「86万人の自宅に届く!乳がんで死なないための切り札をあなたへ」(2018年9月5日放送。詳細は最終ページへ)も担当した
国が推奨する、男女に共通するがん検診(胃・肺・大腸)のなかで、大腸がんは「<要精密検査>の通知が届いても、病院へ行かない人の比率」が、ずば抜けて高い
国が推奨する、男女に共通するがん検診(胃・肺・大腸)のなかで、大腸がんは「<要精密検査>の通知が届いても、病院へ行かない人の比率」が、ずば抜けて高い
今回の「ガッテン!」大腸がん放送回のオンエアに併せて、協力いただいた自治体に住む該当者の方々に発送された「大腸がん要精密検査の人用のリーフレット」。左側が女性用で、右側が男性用。国立がん研究センターが、男女それぞれの心に響く言葉を精査したうえで独自に作成した
今回の「ガッテン!」大腸がん放送回のオンエアに併せて、協力いただいた自治体に住む該当者の方々に発送された「大腸がん要精密検査の人用のリーフレット」。左側が女性用で、右側が男性用。国立がん研究センターが、男女それぞれの心に響く言葉を精査したうえで独自に作成した
国立がん研究センターが、各自治体で使用してもらえるように作成した『大腸がん検診受診勧奨リーフレット』。がん検診未受診者と受診者双方への徹底した聞き取り調査によって、受診者を代表的な3つのタイプに選別。リーフレットには、その3つのタイプそれぞれに訴求するメッセージを掲載し、自治体が受診者に検診をすすめやすいようにまとめられている。 ※画像をクリックすると、リーフレットの実物が見られます
国立がん研究センターが、各自治体で使用してもらえるように作成した『大腸がん検診受診勧奨リーフレット』。がん検診未受診者と受診者双方への徹底した聞き取り調査によって、受診者を代表的な3つのタイプに選別。リーフレットには、その3つのタイプそれぞれに訴求するメッセージを掲載し、自治体が受診者に検診をすすめやすいようにまとめられている。 ※画像をクリックすると、リーフレットの実物が見られます
国立がん研究センターでは、地道な聞き取り調査によって、検診未受診者の人たちの
国立がん研究センターでは、地道な聞き取り調査によって、検診未受診者の人たちの"検診に行かない理由"や、"検査を受けない理由"を収集。それらの意見をもとに、“ついつい検診を受けたくなる”リーフレットを開発し、受診率向上の成果をあげている。このリーフレットでは、自治体による助成金によって、実際の受診費用よりもどれだけ割安になっているかを明記。大切な訴求ポイントである「費用面での後押し」も強調している ※画像をクリックすると、リーフレットの実物が見られます

 いまや2人に1人がかかるといわれる「がん」。実は、その中でも死亡数が多いのが『大腸がん』です。早期に見つかれば、手遅れにならずに治療ができるのに、「がんの疑いあり」と判定されても、その後の精密検査を受けに行かない人がとても多いことが、大きな問題となっています。NHKの科学番組でこの問題の真相に迫った制作ディレクター2人に、「大腸がんで、死なない秘策」をうかがいました。

◆   ◆   ◆

大腸がん『便潜血検査』での思い込みが、死を招く!?

 その秘策を教えてくれたのは、NHKの人気番組『ガッテン!』で大腸がん特集を担当した女性ディレクターの田村圭香さんと、番組デスクの小澤恵美さん。現在、国立がん研究センターと手を組んで、『大腸がん撲滅キャンペーン』にも奔走中です。

「大腸がんを番組テーマとして扱おうと決めてから、大きな謎にぶつかりました。それは、大腸がん検診の受診者たちは、ほかのがん検診の受診者たちと比べて、“がんの疑いあり”と指摘されても病院に行かない方々がものすごく多い、ということです。部位別の死亡数が、大腸がんは女性で1位、男性で3位。命に関わるのになぜ病院に行かないのか? 私たちには、それがとても不思議に思えたのです」(小澤デスク)

国が推奨する、男女に共通するがん検診(胃・肺・大腸)のなかで、大腸がんは「<要精密検査>の通知が届いても、病院へ行かない人の比率」が、ずば抜けて高い
国が推奨する、男女に共通するがん検診(胃・肺・大腸)のなかで、大腸がんは「<要精密検査>の通知が届いても、病院へ行かない人の比率」が、ずば抜けて高い

 その謎を解き明かすために、番組では大規模アンケートを実施。“大腸がんの便潜血検査で《要精密検査》(→「がんの疑いあり」)になったにもかかわらず、病院に行っていない人”の実態を調べました。

「アンケートで見えてきたのが、便に血がついた理由を“痔(じ)だと思った”という人が多数、見られたこと。さらに驚いたのは、その半数弱の人たちは“痔持ち”ではないのに、痔だと思い込んでいたのです」(小澤デスク)

「特に女性の場合、出産を経験すると痔になりやすいと言われています。また、生理で便に血が混じることを“見慣れている”ため、なかなか大ごとには思えないのかもしれません。便潜血検査で陽性になっても、大腸がんではなく、“生理かな”“不正出血かな”と思いたくなる気持ちも、わかる気がしました」(田村ディレクター)

 田村さんの言うとおり、痔だから便に血が混じり、便潜血検査で陽性になったのだろうと考えるのは、不自然ではないかもしれません。しかし番組が、青森県が行う7000人規模の便潜血検査に相乗りして調べてもらうと、痔があろうがなかろうが、陽性になる割合は同じ。つまり、痔が便潜血検査に影響することはほとんどなかったのです。

 だからこそ“痔持ち”の人も“痔なし”の人も、大腸がん予防のために積極的に便検査を受け、要精密検査の通知が届いたら、痔や生理のせいだと思い込まずにできるだけ早く、病院に行くことが大切なのです。

 しかし、2人の女性ディレクターはその結論だけでは満足せず、「がんの疑いあり」という検査結果が出ても病院に行こうとしない“人間心理の謎”について、さらに踏み込んで取材を進めたのでした。