テレビに映るカリスマモデルが“マネキン”だった時代

しげる「いきなり人気のある雑誌『CanCam』のヘアページから、数ヵ月後には表紙モデルなんてすごい事だよね!ファッションページのポージングの練習とかは他のモデルさんを見て学んだの? 教えて貰う事じゃないもんね。そこは自分の魅せどころだから」

西山「教えてくれない(笑)しかも私は元々古着好きで、ファッション系統も全然違っていたのでいわゆる“赤文字系”の雑誌は読んできてなかったから(笑)」

しげる「確かに、古着テイストの茉希ちゃんのイメージがあるかも!」

西山「初めてファッションのページに行った時にその当時の編集の方たちから言われたのが“『CanCam』は見て覚えさせるから。学びたかったら見て覚えて”。だから撮影の間、カメラ前の先輩を必死に見て覚えて(笑)。

 いつの間にかに、朝4時から長いときで夜中の2時とかまでの仕事をやって、その間にバラエティー番組に出演するようになりました。そうしているうちに本来あった“人と過ごしたい、人と一緒に笑いたい”って欲求がわからなくなっちゃって

しげる「そうだよね~、いつも移動は車で、昼間の街を歩く事があまりない生活だと、季節感っていうか、“たんぽぽがこんなとこに咲いてる~!”みたいな感動とか時間の感覚とかもなくなるからね。余裕がなくなると心から笑う事ができなくなるよね」

西山「うん。“茉希は笑顔担当!”ってはやいうちからハッピーなキャラクターをつけけられて……(笑)そのうち“私は嘘をついているんじゃないか”って思い始めて。こんなに“茉希ちゃん、茉希ちゃん”って言われてるのに“芸能界って何なんだろう、モデルさんへの憧れって何なんだろう”って」

しげる「こんなんで、人を笑顔にできるのかって話だよね。それじゃ大変だよね。そこを乗り越えるきっかけみたいなものはあったの?」

西山「ちょうどその頃に(フジテレビの総合格闘技番組の)『SRS』の5代目ビジュアルクイーンに就任したんです。玉袋筋太郎さんと水道橋博士さんの浅草キッドのコンビに囲まれて。そしたら、“西山!”って呼んでくれる玉さんがいて。何となく喋ってくれるときに(素の私を)見つけてくれて、それを収録中でも引き出してくれたの。その当時『CanCam』の格好で出ていたんだけど、私の素のキャラクターをなくさないでお仕事させてくださったのが浅草キッドのお二人で。そこで私はテレビのお仕事とおしゃべりが好きなんだ!って思えました」

しげる「すごく素敵な出会いだね!」

西山「ただ、玉さんや博士には通用するけど『SRS』じゃない番組はやっぱり全然なんか“仲間外れ感”というか。それで結局は『CanCam』メインのスケジュールだから、バラエティーで回数を重ねて前室でお話している芸能人たちの輪には入れないし。プライベートのご飯とかお友だちとか、正直拒否してたし、そういう関係性も作れなかった。

 親友の山田優だって最初声かけてくれてたけど、 “茉希は本当に電源切っちゃってどこに行くかわからない子だった”って今でも言われるし。すごいやっぱりコミュニケーション能力を見失っていた時期でした」

しげる「当時のいわゆるカリスマモデル(コンサバ誌)ってバラエティー番組のパッケージに合わせるのが難しそうだったもんね。あまり喋りすぎてもダメ、常にニコニコしてなきゃダメとか。でも。そういうのテレビの視聴者からするとつまらないタレント

西山「そうそう」

しげる「そこがジレンマだよね、コンサバ誌のモデルだからって、いきなりドカーンって笑いをとっていくのは難しいよ~。編集部とかからも“下品なコトは言っちゃダメ”とか、きっとあるでしょ!? 誌面のモデルとしての品格というかイメージもあるだろうし、広告ページのイメージもあるだろうし。そんなジレンマの中で、素の自分を引き出してくれる人に出会えたら、仕事としてのしゃべりも、すごく楽しくなるよね~」

 

西山「その当時は今よりもモデルさんが雑誌の中のカリスマ的存在で、マネキンになっているっていう考え方が強かった。だからそれこそ専属モデルの雑誌がガッチリトップとってた。“テレビ出るのはいいですけど、衣装は『CanCam』のスタイリストの方でお願いしますね”って

しげる「イメージを変えずにね」

西山「私なんかは特に喋ると何も考えずしゃべっちゃうところがあったから、当時はきっと編集部からあまりTVの活動を良く思われてなかったんじゃないかなぁ。(山田)優と注意されたときもあるし(笑)」

しげる「もう、その2人が出会ってしまった時点で、ダメだよね~~(笑)」

西山「でもそんな中で玉さんと博士と過ごすテレビのお仕事の中でどんだけ『CanCam』が忙しくてもそこでなぜか同じ仕事なのに自分の心が緩んで“仕事が楽しい”って思えたんだよね。“私はモデルではあるけれど、テレビのお仕事は好きなんだな”って感じることができたスタートラインがその番組だった