帰り際に「次は口説くぞ」が効く

三木 僕は「芸術には国境も国籍もない」というのが信条でね。特に歌は言葉が通じなくても伝わるから、すごくいいよ。芸術と、あともうひとつ、国境も国籍もないものがあるんだよ。

原田 なんですか?

三木 セックス。どこの国でも、セックスだけはなくならないだろう。もちろん、人間以外の動物も子孫を残すためにセックスをしているから、国籍どころじゃない。どんな生物も営んでいる行為なんだよ。にもかかわらず、今の日本はセックスについてまじめに語らないよね。

原田 そうですね。神聖化しすぎてフタをしているかもしれません。

三木 しかも最近の男は「セクハラ」と言われるのが怖くて女性を口説けなくなってるそうじゃないか。

原田 そうですね。僕は別の理由で、もう女性を口説けないですけど……。

三木 原田くんは僕から見たらまじめな男なんだけどな。原田くんは別として、セクハラが怖くて女性を口説けないという男性にもアドバイスがあるんだよ。例えば、1回目のデートでは女性を口説かず、帰り際に「次は口説くぞ」と宣言して別れるんだよ。そう言われれば、口説かれたくない女性は次のデートには行かなければいいし、セクハラと訴えられることもないと思うんだよな。

原田 なんだかドラマのワンシーンみたいですね。先生もそう言って今の奥さんを口説き落としたんですか?

三木 いや、僕は言ったことないんだよ。最近考えたから。

原田 ないんですか!(笑)

三木 惜しいことをしたよね。使ってみたかった。今の妻は、僕が講師をしていたシナリオ学校の生徒だったんだ。

原田 先生と生徒として出会ったんですね。じゃあ個人授業で仲を深めて……?

三木 個人授業もしてないよ(笑)。ちょうど、離婚騒動で大変だったときに知り合ったから、僕を気の毒に思ったのかもしれないな。

原田 お優しいんですね。

三木 優しいんだろうな。でも、もう子どもはつくれないよ(笑)。

原田 夫婦関係の形はそれだけじゃないですから! 先ほどの奥さんとのエピソードを聞いて、ご夫婦の仲のよさが伝わってきましたよ。

三木 今じゃ、完全に尻に敷かれてるよ。僕の味方はもう愛するネコしかいない……。

原田 また、ご冗談を。

三木 僕と同じ50歳で人生の岐路を迎えた原田くんには、縁を感じるよ。若いころの自分を見てるようだ。新しい芸名でジェームス原田ってのはどうだ?

原田 うれしいです! 今日は、先生の闘魂をしかと受け取りました。末はジェームス原田を名乗れるように、これからも精進します!

【本日の、反省】
 ジェームス先生は、85歳の今も男としての色気をきちんとまとっている、すべてを超越した存在でした。男としての理想像を持っているから軸がまったくブレない。いろいろな経験を通して反省と奮起を繰り返してきたからこそ、言葉に説得力がある。でも“男はこうあるべき”という考えを押しつけるわけではない、優しさを感じました。女性関係で追従はできませんが、男としてジェームス原田になれるよう、がんばります!

《取材・文/大貫未来(清談社)》


ジェームス・みき ◎1935年、旧満州奉天(瀋陽)生まれ。小学生のときに大阪府に引き揚げ、高校を中退後、劇団俳優座養成所に入る。その後、テイチク新人コンクールに合格し、歌手として活躍。'67年に「月刊シナリオ」コンクールに入選し、野村芳太郎監督に師事し、本格的に脚本家の道へ。大河ドラマ『独眼竜政宗』など、数々のヒット作品を手がける。

はらだ・りゅうじ ◎1970年、東京都生まれ。第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞後、トレンディードラマから時代劇などさまざまな作品に出演。現在は俳優業にとどまらず、バラエティーや旅番組に多く出演し、活躍の幅を広げる。芸能界きっての温泉通、座敷わらしなどのUMA探索好きとしても知られている。