3つ目は、“家族への愛”

大林監督と妻の恭子さんについて、前出の石森さんは、

妻、プロデューサーとして支えた

「最高の夫婦であり、同志でもある平等な関係でした。恭子さんはプロデューサーとして、監督には映画づくりに集中してもらうよう、家事だけでなく製作費を工面するための銀行との折衝まで、すべてをこなし、支えていたんです」

 妥協を許さない監督の撮影は深夜におよぶことも。恭子さんは、しっかりと支えた。

'17年の舞台挨拶に付き添った恭子さん(左)と千茱萸さん
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「監督は“目配りの人”で、恭子さんは“気配りの人”。撮影が朝5時までおよぶと、恭子さんが豚汁を作ってくれるんです。それが、実にうまくて身体が温まりました。まさに一心同体で、本当に愛し合っていました」

 固い絆で結ばれた夫婦に、新たな家族として加わったのが千茱萸さんだ。二人三脚から三人四脚で、映画を作ってきた。千茱萸さんは父である大林監督への思いを語る。

「4月16日で初七日を迎えましたが、父は“愛の塊”のような人でしたので、父との思い出は、繰り返し押し寄せる波のように尽きません。母のお腹にいるころから、父の撮影現場に参加し、親しきみなさんからは“一卵性親子”と言われるほど仲睦まじい父娘でした」

 父が懸命に作り上げた作品を、千茱萸さんは多くの人に届けたいと願っている。

「今は1日も早いコロナの終息を願い、新たな公開日を待つばかりですが、それまでみなさんに旧作をご覧いただけたら何よりの供養になると思います。どうか命がけでつくった新作を楽しみにしていてください。なお、父と私が交わした会話はふたりだけの“秘密”とさせてください」

 大林さんの映画を見れば、その“秘密”に少しだけ触れることができるかも。