東京都のネットカフェ難民問題について4月17日にも報じた(新型コロナ福祉のダークサイド、ネットカフェ難民が追いやられた「本当の行き先」)が、その後も改善されるどころか、ますますひどいことになっているのでお伝えする。

「12億円を計上して支援します!」

 東京都は緊急事態宣言を受けてネットカフェに営業停止を要請。それにより4000人ともいわれるネットカフェに寝泊まりする、いわゆるネットカフェ難民と呼ばれる人たちが行き場を失い、通称・無低と呼ばれる、雑居状態が多くて新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される無料低額宿泊所に追い込まれたりしたのは前回、書いたとおり。その後、支援団体らの強い訴えで厚生労働省が「個室の利用を促すこと」と「衛生管理体制が整った居所を案内する配慮」を各自治体に連絡したはずだったが……。

「ネットカフェから出された人に対する緊急宿泊支援提供ですが、4月25日までに計651人がビジネスホテルに入所できました」

 そう教えてくれたのは、生活困窮者を支援する団体『つくろい東京ファンド』の代表を務める稲葉剛さん。一見、順調に進んでいるように聞こえるが、実際はそうじゃないんだそう。

「『東京チャレンジネット』を通じてビジネスホテルに入居できた人の割合を調べたところ、日を追うごとに支援につながる人の割合が下がっていることがわかったんです。おそらく電話やメール相談の段階で断られている人も多いと推測されます」(稲葉さん)

『東京チャレンジネット』とは、従来からある東京都が行う生活・居住、就労を支援するサポート事業だ。そのホームページには「住まいを失い、インターネットカフェやマンガ喫茶などで寝泊まりしながら就労している方々をサポートする生活支援の相談窓口です」とあるのだが、今回、この窓口へ必死の思いで連絡をしたネットカフェ難民たちが次々に排除されてしまっているんだという。

「私たちいくつかの支援団体は、『緊急事態宣言が発令されれば、ネットカフェ生活者の多くが路上生活へと追いやられるだろう』と予想し、東京都に対してホテルの借り上げ等、緊急の支援策を要請していたんです。それで4月6日に小池知事が会見で、“ビジネスホテルの借り上げなど12億円を計上して支援します!”と発表したんですが、それきり。当事者に届くような広報は今に至るまで、一切、行われていません」(稲葉さん)【注:4月30日にやっとTwitterで告知した】

「やりますよ!」と掛け声だけは大きく、メディアも大々的にそれを発表し、世の中では「ああ、よかったねぇ」と思われているが、実際には支援に消極的で、窓口を当事者や支援者たちが探さなければならない。最初に言っていたことと違う。今のさまざまなコロナ対策で起こっていることと同じ流れだ。

「そこからもルールは二転三転。東京チャレンジネットでは都内在住6か月以上の人しか受け付けないとされていたので、それは抗議して撤廃させたんですね。そうしたら今度は、東京チャレンジネットはそもそもネットカフェを出された人向けの窓口じゃないと言い出したんですよ」(稲葉さん)

 耳を疑う東京都の対応。正式な発表もせず、しかし実際にはそこが窓口になっていたのに、今度は違うと言いだす始末。 

「私が先日、申請者に同行して東京チャレンジネットの窓口に行ったんですが」と、詳しく教えてくれたのは、前回もお話を伺った『つくろい東京ファンド』の小林美穂子さん。

「東京都がネットカフェから出された人たちのためにビジネスホテルを2000室用意する、その窓口が東京チャレンジネットなんじゃないですか? と尋ねたら、『違います』と明言されました。東京チャレンジネットを通じてビジネスホテルに入れる人は、3か月後に自立する見通しがつく人に限られると言うんです」

 見通し? 今は誰もが3か月後の見通しなんてつかない。私も、おそらく、これを読んでるあなたも。ネットカフェを追い出されて安定した住まいがなく、多くは仕事も失った人たちが、これから3か月働いてお金を貯めて自立するって……。緊急事態宣言の解除だってまだ見えてない。人には会うな、移動はするな、ステイホームなのに? 一体どうやって?