渋くてセクシー、ワイルドでカッコいい……髭を生やした芸能人たちのなかには、株を上げた人たちも。そこまで魅力的に感じてしまう髭の“良さ”とはいったい?

「これは僕の持論ですが、髭は男にとって“顔の額縁”だと思うんです。顔を一枚の絵だとして、枠になる部分ですね。額縁(髭)はとても立派でも、絵(顔)が微妙だとあんまりですけど、一流な絵に額縁が備わると、これはちょっとズルいですよね。

 イケメンな俳優さんや味のある方が髭を生やすと魅力的になるのは、そういうプラスアルファの働きがあるんじゃないんですかね」

 しかし、“ヒゲ男”の先駆者としては、少々気がかりなこともあるようだ。

「正直、危惧(きぐ)していることがひとつあるんですよ。僕は髭を生やし始めてからずっと叶(かな)えたかった夢が“剃刀(かみそり)のCMに出る”ということなんです。

 髭男爵として有名になって、世の中のみなさんに知っていただいてから剃刀のCMのオファーで髭を剃(そ)るということを心待ちにしていたんですけど、この自粛期間が明けたと同時に、髭を伸ばしたイケメン俳優がそれをやってしまうんじゃないかと思っていて……。ネタをするときにワイングラスにファンタグレープを入れていたのも同じ理由で、ファンタのCM狙っていたんですけどダメでしたし……ちょっと心配ですね」

髭を伸ばしたくなる
その心理とは

 また、外出自粛で表舞台に出ないという理由があるものの、一部の女性たちからは「家にいても剃ってほしい」「清潔感がない」という否定的な意見も。剃らなくてもいい状況なら、男性は髭を生やしたくなるものなの?

「僕は中学2年から20歳くらいまで引きこもりだったんですけど、15歳のときくらいから、家でほぼ今の状態と同じくらい髭を伸ばしたことがあったんです。どうにもならない現実に対して気分転換がしたかった、あるいは変身願望みたいなものがあったのかもしれません。

 芸人になって髭を伸ばし始めたときも、芸人として売れなくて、どうすればいいかわからないアンダーグラウンドにいた時期だったので、そういう心理になるのかもしれないですね。

 よく空手家が修行で山ごもりをしたり、漫画の主人公が修行をすると髭がボーボーになっていることがありますけど、男ってこもると髭を伸ばすという行動パターンがあるのかもしれません。ある種いまは、この状況に耐えるという修行のような極限状態ですし」

 自粛期間に髭を伸ばす男性たちに、“ヒゲ男”の先輩としての心得を聞いてみると、

「当たり前の話になるんですけど、自分の髭にしっかりと責任を持つということです。僕は形は剃刀で毎日を整えていて、長さは3日に1回バリカンで整えています。お庭に芝生を生やしたけど、ほったらかして草がボーボーに生えている、というのはよくないですよね。芝生はきれいに管理をしてこそ美しくなるのでそういう意識で髭を楽しんでほしいと思います」

答えてくれたのは…… 山田ルイ53世(45)

お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。兵庫県出身。月刊誌『新潮45』に連載された『一発屋芸人列伝』が、'18年の『編集部が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』作品賞を受賞。その他著書に『ヒキコモリ漂流記完全版』(角川文庫)など