毎回放送されるごとにSNSで話題をさらうドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)がついに最終回を迎える。本作の脚本を務め、作詞家、ラジオパーソナリティー、タレント、映画監督としても幅広く活躍する放送作家の鈴木おさむ氏に直撃! 話題作『M~』の裏話や、『SMAP×SMAP』との関係性。大映ドラマへの愛から今後の40代女優の“希望”まで語ってもらった。

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 同作は平成の歌姫・浜崎あゆみの誕生を描いたシンデレラストーリー。浜崎とエイベックス株式会社元CEOの松浦勝人氏へのインタビューをまとめたノンフィクション作家・小松成美氏の小説が原作だ。5月16日放送のラジオ番組『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』(TBSラジオ)で鈴木氏は「脚本やってくれと言われ正直悩んだ」と明かしている。

「浜崎さんの人生を描くとなったとき、ドキュメンタリー的に見えてしまう恐れを感じました。また、浜崎さんがご健在であることで、亡くなられた偉人たちのドラマ……例えば何度かドラマ化された『美空ひばり物語』のような形は成立しないだろうと。この2つからフィクションであることを分からせる強烈な“何か”がなければと悩んだのです」

 そこで目をつけたのが『ヤヌスの鏡』などケレン味たっぷりの作品を多く生み出したことで知られる『大映ドラマ』だった。浜崎がデビューした90年代、大映テレビは昼ドラや『十津川警部シリーズ』などの2時間ドラマは制作していたものの、『スチュワーデス物語』や『スクール☆ウォーズ』のような “ザ・大映”な作風のドラマは当時、息を潜めていた。つまり、その時代には“ない”ものだった。そこから鈴木氏は、90年代と80年代(大映ドラマ)、ギャップある2つの時代を組み合わせることで、いい意味で違和感のある作品が生まれるのではないかと思い至った。

「実は制作陣に、以前、東海テレビで(小沢真珠の怪演で話題となった)『牡丹と薔薇』を作っていたプロデューサーがいらっしゃるんです。それを聞いて僕は、(僕の脚本とうまく化学反応が起こりそうだと)安心しました。大映ドラマっぽいのほか、昼ドラっぽいと視聴者から評価をいただいているのは、そのためですね(笑)」

大映ドラマの不気味さ

 鈴木氏が多感な少年時代を、大映ドラマを見て育ったことも幸いした。

「例えば堀ちえみさん主演の『スチュワーデス物語』。堀さんは当時まだ新人で、その初々しさも魅力でした。『M』で主演の安斉かれんさんもこのドラマが初演技。そこが共通項なので、堀さんは『ドジでのろまな亀』などの名言を、一方アユ(安斉)は、『アユ、ダイヤになる』というセリフがあります。これは、堀さんの当時のムーブメントを強く意識した結果です

 また、よく話題になる眼帯秘書・礼香(田中みな実)。彼女は『スチュワーデス物語』の片平なぎさらへのオマージュが含まれている。

片平さんが義手をギリギリとするお芝居がすごく怖かったんですよ。また片平さんだけでなく、例えば『不良少女とよばれて』では元ピンクレディーの未唯mieさんの『NEVER』という曲から始まります。そこで鬼の面をかぶって踊り狂う人が映され、さらに『この物語は~』とナレーションが。曲も雰囲気もすごく怖くて、そうした不気味さも大映ドラマの良さだと思うんです。これらを意識しながら礼香というアイパッチのキャラクター、そのほかの多くのシーンを作っていきました