コントにしたくなるようなドラマを

 鈴木氏は「かなりの大映ドラマ愛を詰め込んだ作品なんです」と微笑む。今回の作風には『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)などでコントを書いていた経験も生きている。

これは故・志村けんさんら出演の『8時だョ!全員集合』(TBS系)などの発明だと思うのですが、『SMAP×SMAP』でも、芸人さんではないSMAPというアイドルがコントを“演じて”いました。とくに香取慎吾さんからは強く感じましたが、お笑いじゃない方が“演じる”ことで生まれる特殊な爆発力というものが存在します。

 それを意識したほか、木村拓哉さんの『古畑“拓三郎”』のように、当時はパロディにしたくなるドラマや映画は数多くありました。ですが、いつからでしょうか。時代の風潮もあったのでしょう、パロディ化したくなる作品が減っていってしまったのです。コントの書き手として困りましたね(笑)

 同作の脚本を書く際、当時のこの苦悩が脳裏をよぎった。そこで鈴木氏が出した結論が「誰かがマネしたくなるような、コントにしたくなるような要素を含んだ作品を作ろう」ということ。そこから生まれたのがインパクトのあるパワーワード群、アユの 「アユ、負けない!」や、マサ(三浦翔平)の「俺の作った虹を渡れ」たちだった。

三浦さんから聞いたのですが、三浦さんもマサのキャラとセリフに驚き、当時はどう演じようかと悩んだのだそうです。ですが振り切って演じてくださった。放送後、ある俳優さんから連絡があったそうで、“あのセリフをあそこまで真剣に演じられるのはお前だけだ”と言われたとお話されていました(笑)

 ややイロモノ的なキャラとセリフが「逆に三浦さんの顔の美しさが際立った」と語る鈴木氏は「今の時代は、視聴率ではなく、世間を“ざわつかせること”が大事」だとも話す。

「今はいくら視聴率が良くても、余程じゃない限り話題にならない。そこでSNSですね。セリフには気を使いました。例えば、田中みな実さんのセリフ。普通の脚本家だったら表記は「許さな~い!」で、後は役者さんにお任せするんです。でも僕はコント経験から、表記は「許さなーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」(笑)。先ほども言いましたが、お笑いじゃない人にざわつくような芝居を分かりやすく“演じて”もらう僕なりの手法。こうした試みが功を奏したのでしょうか。SNSでは“ツッコ見”という“ツッコミながら見る”という言葉が生まれたようで、うれしかったです」

 ざわついたと言えば、水野美紀演じるカリスマトレーナー・天馬もそうだ。

「興奮したらシンバルをかき鳴らすなどの奇行を脚本に取りいれました(笑)。女優さんも40代になりますと落ち着いた演技をされたり、または視聴者が持っている元々のその女優さんのイメージを利用した役柄が多くなるのですが、水野美紀さんを見て思ったのは“40代でもこんな役柄ができるんだ!”という新しい価値観が生まれたのではないか、ということ。

 海外と違い、日本では40代になると役柄の幅が狭まってしまいます。お母さん役やキャリアウーマン役とか。それぐらいでしょうか?……勿体ないですよ! 経験を重ねた分、40代なら実力的に、もっといろんな役柄を演じられるはずなんです。若い人が活躍するのはもちろんいい。でもこれからは“40代になってもいろいろ選択肢があるじゃん”という風になってほしい。そうすれば女優さんにも、日本にも、“希望”が出てくるんじゃないでしょうか

 40代女優の新境地も切り拓いた本作。最後にメッセージをもらった。

本作はツッコミどころ満載かもしれませんが、浜崎あゆみという歌姫は本当にいて、多くの名曲が実際にある。虚構やおふざけの中に一つ真実があるというのが本作の面白さのように感じます。そんな同作の最終回、どうぞお楽しみください!

(文・構成/衣輪晋一)