子どもが親となって、親や家庭を支えてしまう

 異性関係にだらしがない父親、精神的に依存しやすい母親というのは、親としてふさわしい資質とは言えないでしょう。このような不健康な家庭を機能不全家族と呼びますが、こういう家庭に育った子どもは性格にいくつかの特徴を持つことが知られています。

 そのうちの1つが、心理学で「イネイブラー」(支え役)と呼ばれるものです。親が頼りないので、子どもが親となって、親や家庭を支えてしまうのです。ここの部分だけ聞くと、日本人が好む「親孝行ないい子」だと思う人は多いことでしょう。しかし、このイネイブラーがひたすら家族を支えることで、問題の解決は遠のいてしまいます。

 また、イネイブラーが成長して恋愛をするようになると「自分が面倒をみないとどうにもならない人」、つまりダメ男を求めてしまうこともあるそうです。アルコール依存症家庭に育った女性が、「あんな親のようになりたくない」と強く思っているのに、結局アルコール依存症の男性と結婚してしまうケースがあるのは、このためです。

 がこのタイプだと決めつけるつもりはありませんが、渡辺謙も実母も、この先変わらず、親としては適切でない行為を取り続けていくのではないでしょうか。

関係性が変わるのは“無責任”になれたとき

 家族の問題で難しいのは、誰が悪いのかを簡単に決められないところです。謙の病気がきっかけでの母親が宗教にはまったと報道されていましたが、謙は好きで病気になったわけではありませんし、一家の大黒柱が若くして命に関わる病気になったとき、宗教に救いを求めても誰も責められないでしょう。しいて言うのなら、無事に病から生還した謙は不倫などしないで、これまで苦労をかけた妻子を大事にしてほしかったと思いますが、とりあえず言えることは、家族の問題で犠牲になるのはいつも子どもだということです。

 親という名の「問題のある人」に関わり続ける限り、はずっと両親の“尻ぬぐい”をさせられ続けるのではないでしょうか。しかし、イネイブラータイプの子どもほど責任感が強くて、親を見捨てることができないことも、身近な事例で私は知っています。

 仕事は順調そのものなのに、なぜか家族トラブルが絶えない。彼女がそういう家族を突き放して“無責任”になれたとき、関係性はまた変わってくるのかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」