その象徴はネット上の反響が大きく、クライマックスのコーナーとなっているクイズ「ノブ違和感」。AI技術でノブの顔をかぶせた有名人を当てるクイズなのだが、さくらまや、照英、水沢アリー、長州力らにふんして爆笑を巻き起こしている。つまり、クイズを解くよりもMCが笑わせることを優先させたクイズだ。

 その他にも24日放送分では、クイズ「歴史的映像の中に散りばめたノブを探せ」が出題され、金髪美女ノブ、女子アナノブ、音声ノブ、少女ノブ、ロシア人ノブ、少年ノブ、マダムノブ、キャンギャルノブが登場。クイズ「違和漢字」では、画面中に数十人のノブが現れるCGや、『北斗の拳』ケンシロウのコスプレ。クイズ「名曲! 当て字違和感」では、画面左下にCGキャラ“ちびノブくん”が動き回るなど、遊び心が満載。

 さらに、「世紀の泥仕合です」「クイズ番組のセルフカバー見たことない」「“Tube違和感”じゃない!」などの際立つツッコミが決まると画面いっぱいに文字を映すなど、随所にノブをフィーチャー。スタッフが視聴者に「一緒にノブをイジって遊ぼうよ」と呼びかけ、ノブ自身も「どうぞ僕をイジって遊んでください」と誘っているようなムードがある。

 スタッフと視聴者の間に「ノブで遊ぶ」という共通認識が育まれているだけに、こうなると「どんなイジリ方でも笑える」というゾーンに入りやすい。この番組ほどではないにしても、ノブがMCを務める番組には少なからず「ノブで遊んでいいよ」というムードが漂っていて、それこそがノブの強みだろう。

今秋の土日はノブのMCが話題に

 10月には単発番組として4回放送された『ノブナカなんなん?』(テレビ朝日系)がレギュラー化され、しかも土曜22時台というプライムタイムでの放送。同番組は「『なんなん?』な人々の人生をのぞき見してツッコミを入れていく」というノブのためにあるようなコンセプトであり、コンビを組む弘中綾香アナやスタッフから遊ばれるだろう。

 また、深夜帯の『テレビ千鳥』も日曜22時台に昇格するなど、今秋はノブのMCが今以上に話題を集めるのは間違いない。

 もともとノブはツッコミのうまさには定評があったものの、「聞き取りやすい」とはいえないしゃがれ気味の声を不安視する向きもあった。しかし、「どんなに遊んでもいいよ」という気安さや、「MCなのに顔だけで笑わせられる」という顔面の力で、今後も大きな仕事が増えていくだろう。

 これまでノブといえば、あきらめたように嘆く脱力ツッコミのイメージが強かったかもしれないが、すでに新たな武器を身につけているのだ。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各番組のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴。著書に「トップ・インタビュアーの「聴き技」84」「話しかけなくていい!会話術」など。