(撮影:梅谷秀司)/東洋経済オンライン
(撮影:梅谷秀司)/東洋経済オンライン
すべての写真を見る

 40代になってやっと「ひとりでいいんだ」と思えるようになったというヒロシさん。転機は、ズバリYouTubeだった。

「単純に、TV以外の場所ができたのがうれしかったんです。いろんな人がたくさんいる中で番組出演枠を勝ち取るためには、運や努力、人付き合いが必要。それが、YouTubeやニコニコ動画なら、たったひとりで好きなだけ発信ができる。お金も稼げる」

 もちろん、チャンネル開設当初から稼げていたわけではない。それでも、初めての動画広告収入が入ったときのよろこびは、忘れられないという。

「最初は、たった数百円。でも、ひとりで作り上げたものをお金にできたよろこびは、たまらなかったです。自信につながるし、みんななんでも発信したほうがいいと思いますよ。何がコンテンツとしてウケるかなんて、わからないですから」

今、「みんな」の中で苦しんでいる人へ

 今でこそひとりを楽しんでいるヒロシさんだが、中学時代にいじめられていた経験がある。輪の中に入ることもできず、苦しんだそうだ。今まさに“みんな”の中でつらい思いをしている子どもにかけてあげたい言葉はないか、聞いてみた。

「キツいよね……いじめはね、しんどいですよ。大人になっても、嫌なことをしてくる人はいます。死にたくなるくらいなら、学校なんて行かなくていい。ただ、逃げてほしい」

 つらい記憶が蘇ったのか、言葉を詰まらせた。

「僕も、転校していじめられました。小さなコミュニティーでああだこうだと言われるし、しんどかったです。誰も助けてくれませんでしたしね。先生だって全員が人格者というわけでもない。ただ、教員資格を持っているというだけなのに、子どもは『先生は間違いがない、素晴らしい人』と思い込んで、自分を責めてしまう」 

 いじめられていたことは、親にも相談できなかったそうだ。

「自分の息子がいじめられていると知ったら、親もショックを受けてしまうでしょう? 当時の自分は、よく耐えていたと思うけれど、心が麻痺してたのかもしれない。今なら『逃げろ、学校なんてやめてしまえ』と言いたいですね」