《人にぶつかっていないと、生きているかどうかよくわからなくなる》
そんな一節が印象的な小説『青天』は、お笑いコンビ「オードリー」の若林正恭によるデビュー作だ。
「アメフトに青春を捧げた男子高校生の苦悩や喜びを描いた小説です。2月20日の発売前から重版がかかり、現在では28万部を突破して異例のヒットとなっています」(スポーツ紙記者)
なぜ、ここまで読者の支持を得ているのか。お笑い評論家のラリー遠田さんは、こう語る。
「若林さんは、これまでもエッセー本を刊行して、いずれもベストセラーになっており、高く評価されています。すでに書き手としての信頼を得ていたからこそ、小説という新しい分野に挑んだこと自体が多くの人の興味を引いたのでしょう」
すでにエッセーで確固たる読者を持ち、信頼を得ていたことがヒットの要因になったという。
『青天』の物語の中心にあるのは青春期の葛藤や劣等感。これは若林が繰り返し語ってきたテーマと重なる。
《劣等感ですね。劣等感があるから、お笑いなんかやってるんだと思います》
過去にフリーペーパーのインタビューでそう明かしているように、若林のネガティブ思考が創作活動に生きている。
「若林さんがこれまで文章やトークで表現してきた“うまく生きられない人間の感覚”を、青春小説という形式で描いた作品が『青天』です。彼自身の経験や趣味嗜好が反映されていると思われる部分も多く、ファンにとっては読み応えがあるはずです」(前出・ラリー遠田さん)
「いま、この瞬間を楽しもう」
一方で、2020年にウェブサイトのインタビューで、父親が亡くなったことをきっかけに生じた価値観の変化についても語っている。
《一緒に過ごしたりしながら亡くなっていく過程を見ていたことは、かなり強烈な印象として残っています。1日というものに対する感覚が変わりましたね。(中略)これからは「いま、この瞬間を楽しもう」と思うようになりました》
今までは“俗物のやるもの”だと思っていたゴルフを始めたり、夜中にバスケットボールのコートに行ってスリーポイントシュートを打ったりと、自分に正直に人生を楽しもうとしている。
また、2019年に結婚を発表した若林は結婚生活についても前述のインタビューで、
《今まで本当に自分のことしか考えていなかったんだなあ!と実感しました。反省しかないですよ》
と振り返り、家族を持つことで自省したと語っている。こうした経験をもとに、不器用にしか生きられなかった若者は、ベストセラー作家になった。





















