コロナ以前はホテルの存在が
大きな強みだったが……

 ホテル業の投資というのは、客室数を増やすばかりではない。最上位クラスの京王プラザホテルでは、客室改装などにより、客室単価・グレードを上げてきた。狙いは、「欧米豪の顧客・新興国の富裕層の獲得」だ。

 その結果、2018年度までの6年間で、京王電鉄の「レジャー・サービス業」の営業利益は約5割もアップした。他社も積極的に投資する中、京王電鉄では京王プラザホテルの存在が大きな強みとなった。

 その「レジャー・サービス業」が、新型コロナウイルスで大打撃を受けている。

 この第一四半期には、営業収益が81.3%減にまで落ち込み、62億円の営業損失(赤字)を出した。特に京王プラザホテル(新宿)の落ち込みが深刻で、売上高は92パーセント減、客室稼働率は4.1パーセントである。新型コロナウイルス以前、同ホテルの客室稼働率は約8割だった。それが6月、7月になっても約6パーセントという事態である。

 Go Toトラベル・キャンペーンは、新型コロナウイルスの第2波の最中にスタートしたこともあり、疑問の声が多かった。これで感染が再拡大したらどうするのかと。

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 一方で、京王プラザホテル(新宿)の数字などを見ると、Go Toトラベルを推進する側の意図もわかる。同ホテルは1,455室(2020年4月現在)の大型ホテルだが、その客室稼働率が約6パーセントというのだから、恐怖すら覚える事態である。京王電鉄だけではない。これだけの大打撃に、日本のホテル・旅館はいつまで耐えられるのか。経営破綻はどのレベルにまで及ぶのだろうか。

 9月の4連休は、新型コロナウイルスが流行して以来、初めて自粛の呼びかけがない大型連休となった。感染拡大の第2波はピークを過ぎたが、いまだに日々の新規感染者数は数百人レベルである。それでも、人々の動きは活発になった。

 10月には東京発着もGo Toトラベルの対象に加わることになったが、もはや感染拡大の懸念の声は小さく、歓迎の声の方が大きい。9月の大型連休は、旅行シーズンでもある。今年は、その結果が特に大きな意味を持つ。

 私自身、この4連休、せっかくなので京王プラザホテルでランチを楽しむことにした。閑散としているか、混んでいるか、どちらの想像もできたが、結果的には混雑していた。私と同じように考えた人が多かったのではないか。旅行者というより、東京近辺の人たちが気軽に訪れているような印象だった。

 一番リーズナブルなレストランで、しかもランチである。これだけでは経営の回復ぶりは予想できないが、少なくとも、多くの人に支持されるホテルなのだと再認識できた。

 9月の4連休の結果が数字となって表れるのは、次の中間決算である。その結果には注目したい。


文)佐藤充(さとう・みつる):大手鉄道会社の元社員。現在は、ビジネスマンとして鉄道を利用する立場である。鉄道ライターとして幅広く活動しており、著書に『鉄道業界のウラ話』『鉄道の裏面史』『明暗分かれる鉄道ビジネス』がある。