忘れ去られたもうひとつの“強制わいせつ”疑惑

 実は山口、2006年にも『週刊女性』(5月23日号)に“セクハラ事件"を起こしていたことを報じられている。

 都内でOLをしている20代女性・A子さんの怒りの告発の内容はこうだ。その日、彼女は西麻布のバーで女性の友人グループと飲んでいた。山口はカウンターにひとり。女性のうちのひとりが山口の知人だったらしく、それをきっかけに山口に呼ばれたA子さんが隣に着席、するや否や泥酔状態の彼が驚きの発言を繰り出したのだという。

《舐めたいんだけど……》

「えっ?」と聞き返したA子さんに対し、また《舐めたいんだけど……》と繰り返し、舌を出して動かし始めたという。──まるで妖怪。これだけで充分すぎるくらいヤバいが、驚くはその後。徐々に舌のムーブが勢いづき、A子さんが「冗談はやめてください」と言おうとした瞬間、服をいきなりずらし、あらわになった胸にしゃぶりついたのだ。怖すぎる。

 びっくりして声も出なくなった彼女の身体を舐め続けながら、《この後も……》と関係を迫ってきたので、なんとかかわしたのだという。この舌足らずな感じも妖怪っぽさを感じさせる。妖怪なめしゃぶり、とにかく恐ろしいの一言だ。

 今だったらネットでものすごい話題になりそうなものだが、当時はTwitterなどのSNSもなく、この話が拡散されることはなかった。もし記事が本当なら、完全なる『強制わいせつ罪』であるが、結局ジャニーズ事務所は不問に。くわえて当時は元妻と長期にわたる“事実婚"状態で、記事中でも浮気ではないか? と触れられているが、ふたりは2年後に結婚をしている。

 元妻はこの事自体を知らなかったのか、知ったうえで許したのか、「週刊誌に書いてあることなんて全部ウソだよ」で突き通せたのかはわからない。とにかく、このような事実があったとして、それがメディアを通じて世に放たれたにも関わらず、スター街道と幸せなプライベートに何ら悪影響は起こらなかったわけだ。そりゃ、素行不良も更生されない。芸能界という特殊な世界が彼の特権意識を強くさせたのかもしれない。

 松岡の酒癖を直せとの指摘に「申し訳ないけど変わらないんだよ」と爆笑した30歳、あるいは「バイクで突っ込んでも全然ケガしない」と無鉄砲な発言をした25歳、それとももっと前か──。山口はずっと“俺は大丈夫”のまま時が止まっていた。何をやっても俺は大丈夫、罰されない、酔って女子高生にキスしても酒気帯び運転をしても──そんな非常識が常識になっていたのかもしれない。

 酔った山口が松岡に電話をかけなくなったのはいつからだろうか。

〈皿乃まる美・コラムニスト〉