取材申し込みの手紙をポストに入れるので、読んでくださいと言うと、

はい、わかりました

 と神妙な声で応じた。被告とともに心境の変化があったのだろうか。

東池袋の事故現場に変化がーー

 一方、献花が絶えなかった東池袋の事故現場にも変化が起きていた。全国から送られてきた1140万円の募金で、豊島区はすぐそばの「日出町第二公園」に「東池袋自動車事故慰霊碑」を建立。7月11日には、その除幕式がとり行われた。

 そこには、たびたび記者会見を開き、被害者遺族の無念さや、被告の厳罰を訴えてきた真菜さんの夫で、莉子ちゃんの父親の松永拓也さん(33)の姿もあった。

 今年になり、プライバシーなどの理由で非公開だった下の名前を、「拓也」であることを勇気をもって公表。

「交通事故をゼロに!」

 と松永さんは、悲しみを乗り越えて訴えた。しかし、その碑に真菜さんと莉子ちゃんの名前は刻まれていない……。

この事故がきっかけというのは間違いありませんが、慰霊碑の目的は事故の風化を防ぐ意味とともに、もうひとつ、交通事故の根絶という意味も込められています。したがって特定の名前は入れなかったわけです」(豊島区役所)

慰霊碑に刻まれた碑文
慰霊碑に刻まれた碑文
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 ここを、被告は訪れたのだろうか?

お忍びで来ていたらわかりませんが、まだそれは聞いておりません」(同)

 高齢の被告は、たとえ懲役などの有罪判決が出たとしても、年齢や健康を理由に刑の執行が停止される可能性もある。

 となると、飯塚被告にできる償いは、せめて慰霊碑に手を合わせることになるはずだが……。