ファンにとって“聖地”
ボートレース住之江を保有

 大阪球場の跡地は、公園と建物が融合した複合施設「なんばパークス」に生まれ変わり、パークスタワー、なんばスカイオと、南海電鉄が開発した大規模なオフィススペースが隣接している。その不動産賃貸が大きな利益を生むのだ。

 南海電鉄の不動産業には、マンションや戸建の販売も含まれるため、年によって振れ幅は大きい。それでも、おおよそ不動産業は運輸業と同じ規模の営業利益を出す。運輸業と不動産業だけで営業利益の7割を占めており、この2つの事業が南海電鉄の柱である。

 運輸業はコロナショックの直撃を受けたが、不動産業は健在だ。

 ホテル・旅館業の規模が非常に小さいのも、このコロナ禍では幸いだった。他の鉄道会社は、インバウンドと出張需要の消失により、ホテル業が運輸業以上の大打撃を受けている。鉄道会社の成長を牽引したホテル業は、今では屋台骨を揺るがす存在だ。

 その他、南海電鉄には「流通業」と「レジャー・サービス業」があり、利益率は高くないが、営業収益では不動産業と肩を並べる。

 南海電鉄の「レジャー・サービス業」は、営業収益の約6割を「ビル管理メンテナンス業」が占めており、「レジャー」の要素が低い。同じ関西私鉄でも、宝塚歌劇団や阪神タイガースを運営し、多くの観光地を開発した阪急阪神グループとは正反対である。

出典:決算説明会資料・有価証券報告書(ともに南海電気鉄道株式会社)
【グラフ】「葬祭事業」など鉄道会社では珍しい項目も!南海電鉄「レジャー・サービス業」の内訳

「ビル管理メンテナンス業」を除くと、「レジャー・サービス業」で最大の規模を誇るのが、「ボートレース施設賃貸業」だ。あまり知られていないが、南海電鉄は子会社を通じて「ボートレース住之江」を保有しており、これだけで毎年50億円以上の収入を得ている。

 コロナ禍でも、ボートレースの盛り上がりは衰えていない。

 近年は、ニューヒロインの大山千広選手や、女性ファンを虜にする永井彪也選手など、ボートレーサーの人気が高まっている。田中圭などが登場するCMも、ボートレーサーたちの熱い闘いにフォーカスし、ギャンブルの要素は感じさせない。

 感染リスクの面でも、ボートレースがやり玉に挙がったことはなかった。

 いまだに、遠出するレジャーは敬遠されやすく、“夜の街”に繰り出すにも、パチンコに行くにも、「クラスター」や「三密空間」という言葉が頭をよぎる。感染するのも恐ろしいが、それ以上に世間の目が怖い。娯楽を失った人たちにとって、ボートレースは一つの受け皿になっている。

 しかも、数ある競艇場の中でも、「ボートレース住之江」は聖地とも呼ばれる存在だ。

 年末のSGグランプリなど、重要なレースの舞台になり、なんば駅から地下鉄で数駅というアクセスの良さで、身近な存在でもある。施設を保有する南海電鉄にとっては、先行きが明るく、安定した収入が得られる事業だ。

 先行きが不透明な時代に突入すると、安定した事業こそが重要だろう。