関西空港へのアクセスを担う南海電鉄は、ホテル・旅館業が極めて小さいことが幸いして、新型コロナウイルスの衝撃は思ったほどではなかった。インバウンドの恩恵も受けてきたが、一方で、競艇場を保有し、葬儀場を運営するなど、不況に強いユニークな事業を運営している。

コロナ禍、南海電鉄の現状は

 大阪には伊丹空港があるため、関西空港は国際線の割合が非常に大きく、旅客数ベースでは約8割が国際線である。その国際線の旅客数は8月実績で前年比-99.4%となっており、事実上のゼロが続く。

 航空会社、関西空港とも大打撃だが、そのアクセスを担う鉄道・バスも大打撃だ。

 関西空港へのアクセス特急と言えば、JR西日本の「はるか」と南海電鉄の「ラピート」だが、「ラピート」は4月24日以来、ほとんどが運休である。

 南海電鉄のサイトでは、「特急ラピートは、一部の時間帯において運休しております」と掲示しているが、実際は、ごく限られた一部の時間帯だけの運行になっている。
いずれにしても、国際線を利用する人がいないのだから仕方がない。

 南海電鉄の鉄道業は、8月の輸送人員は前年比の23.9%減だが、運輸収入は36.9%減と大きく落ち込んだ。明らかに、特急料金が取れる「ラピート」の運休が響いている。子会社が運営する空港リムジンバスも大打撃を受けており、第一四半期(4~6月)の決算は、運輸業だけで56億円の営業損失(赤字)である。

 それでも、不動産業が増収増益を記録したため、全体の営業損失(赤字)は17億円にとどまった。厳しい状況だが、他の鉄道会社に比べれば良い成績だ。

 運輸業で打撃を受けても、不動産で儲けられる。

 南海電鉄の路線は、「なんば駅」を起点にして、関西空港、和歌山、高野山、泉北ニュータウンへと広がる。「なんば駅」は、JR難波駅、大阪メトロの「なんば駅」と隣接し、近年は近鉄と阪神の大阪難波駅が開業したことで、利便性が非常に良くなっている。

 その「なんば駅」には、かつて南海ホークスの大阪球場(正式名は大阪スタヂアム)が隣接していた。

 中高年にとって、南海電鉄といえばプロ野球の南海ホークスという人は多い。野村克也が現役時代を過ごし、“ドカベン”こと香川伸行がいた球団だが、今の福岡ソフトバンクホークスとは違い、貧乏球団として知られていた。

 その頃のイメージを持っていると、現在の南海電鉄に大きなギャップを感じる。