他の鉄道会社の
後追いはしない南海電鉄

「ボートレース施設賃貸業」に続くのが、毎年約30億円の営業収益を上げる「葬祭事業」である。

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 南海電鉄は、子会社を通じて葬祭会館「ティア」にFC(フランチャイズ)加盟する。鉄道会社がFC加盟する例は多いが、飲食業が主流で、葬祭会館というのは異例だ。しかも、現在では15会館を運営しており、本格的な事業規模である。

 日本の年間死亡者数は2019年に138万人を突破し、毎年右肩上がりで増加している。家族葬など、低価格な葬儀スタイルも増えているため、死亡者数ほどには市場規模が拡大しないが、それでも、これからの時代に向いている事業だ。

 沿線に密着する鉄道会社が、沿線住民の永遠の別れに立ち会うのは意義深い。相性が良ければ、継続的に利益を生む事業となる。

 このような特徴的な事業が目立つのは、南海電鉄が財務改善に取り組んできた結果でもある。

 今年の3月末、南海電鉄はレジャー施設の「みさき公園」を閉鎖した。経営が改善しなかったのが理由だが、コロナの影響ではなく、それ以前に閉鎖は決定されていた。

 改善が見込めない事業からは撤退し、投資は選択と集中を行い、他の鉄道会社の後追いはしなかった。その結果、鉄道会社が定番とする事業が見られなかったり、他では見られない事業が目立ったり、特徴的な事業内容になっている。

 主力の運輸業は大打撃だが、それ以外の事業に足元をすくわれることがない。これまでの取り組みは、結果的に今の状況に備えることにつながった。


文)佐藤充(さとう・みつる):大手鉄道会社の元社員。現在は、ビジネスマンとして鉄道を利用する立場である。鉄道ライターとして幅広く活動しており、著書に『明暗分かれる鉄道ビジネス』『鉄道業界のウラ話』『鉄道の裏面史』などがある。また、自身のサイト『鉄道業界の舞台裏』も運営している。