原作漫画はこの辺り、とても配慮されている。ドラマの1~3話にあたるエピソードを読むと、ファンタジーとして成立させるために同性愛に対する社会の反応が極力排除されていることに気づく。しかし現実の風景が映り込み、生身の俳優が演じるドラマだと、どうしても現実感が増してしまう。

 会社のシーンの描写は漫画よりも細かく、その結果、童貞や同性愛者に対して偏見を持っている(ように見える)同僚たちや、体育会系ノリに内包されたパワハラ気質が、必要以上に浮き上がって見え、それがBLをファンタジーとして楽しむ気持ちを、阻害してしまうのだ。

 特に第3話で2人が会社の飲み会に参加した際に王様ゲームの罰ゲームとして、男性同士でキスを強要して笑いものにしようとする場面は不快だった。

 黒沢は、その場のノリを優先して安達のおでこにキスするのだが「今時これ?」と思ってしまった。若い男性社員が「王様ゲームとか、マジ時代錯誤すぎて引くんスけど」と言う場面があったことが救いだが、だったらなぜ、そんな時代錯誤なシーンをわざわざ入れたのか? と逆に気になってしまう。

 ある意味、リアルな描写を入れたことで、彼ら同僚が安達と黒沢のことを知ったら、間違えなく酷い対応をするのだろうなぁと、嫌な想像がよぎってしまった。

 おそらくBLドラマは、男同士の恋愛関係を描くこと以上に、彼らを取り巻く会社の同僚や家族の反応をどう描くかが重要なのだろう。そのさじ加減によって作品の立ち位置が大きく変わってしまう。

『おっさんずラブ』はファンタジーとして開き直ったことで幅広い支持を獲得し、中年男性カップルの同居生活を描いた『きのう何食べた?』(テレビ東京系)や、ゲイの高校生がBLを愛好する腐女子(の女子高生)と向き合う姿を描いた青春ドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK)は、同性愛に偏見を持ち、戸惑った反応を見せる周囲の姿を生々しく描いたことでBLドラマの金字塔となった。

『チェリまほ』は、物語はファンタジー寄りだが、描写はリアル寄りで、そのリアルさがノイズとなっている。

 これが後の伏線なのかどうかは、今後を見ないことにはわからないが、描いてしまった以上、ドラマとしての落としどころが必要だろう。そのことを踏まえた上で、続きを見守りたい。

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)公式ツイッターより
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PROFILE●成馬零一(なりま・れいいち)●1976年生まれ、ライター、ドラマ評論家。テレビドラマ評論を中心に、漫画、アニメ、映画、アイドルなどについて幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。サイゾーウーマン、リアルサウンド、LoGIRLなどのWEBサイトでドラマ評を連載中。