「立ち上がったときに頭がクラクラする」「最近、めまいが起きるようになった」など、めまいやふらつきが気になってはいませんか? 日常生活に支障がない症状は「疲れているから」、「寝不足だから」と、ついつい軽視してしまいがちですが、実は、めまいやふらつきの陰に思わぬ病気が隠れていることもあるのです。

「めまいやふらつきの原因で多いのは肩こりと貧血です。ただ、可能性は低いものの、命に関わる怖い病気が潜んでいる場合もあります。例えば、めまいと貧血の症状で私のクリニックに来院された50代女性の患者さんを診察したところ、乳がんが見つかったことがあります」

 と教えてくれたのは、内科医で神戸大学医学部附属病院検査部副部長でもある笠木伸平先生。

めまいやふらつきを侮るなかれ

 笠木先生いわく、乳がんは発生する場所によって進行度が異なるのだそう。

「その患者さんは、転移しやすく、見つけにくい乳房の真ん中に近い部分にがんが見つかりました。すぐに総合病院の乳腺外科で治療を受けはじめたものの、残念ながら亡くなってしまいました」

 また、同じ症状で受診した患者さんに膵臓(すいぞう)がんが判明したこともあるといいます。

「その方は60代の男性で、CT(コンピューター断層撮影)検査の結果、膵臓がんが見つかりました。総合病院で手術と抗がん剤治療を受けたという報告は聞いているのですが、その後の様子はわからず、お元気でいらっしゃることを願うばかりです」

 めまいやふらつきの陰に隠れているのは、がんだけではありません。

「脳への血流が一時的に悪くなる一過性脳虚血発作という病気によってめまいが引き起こされる場合があります。この病気は数分から1時間ほどの短時間で回復することから、治療されずに放置されることも少なくありませんが、脳梗塞の一歩手前の症状であり、放っておくと命に危険が及ぶこともあります。また、脳動脈瘤や心筋梗塞、致死性の不整脈なども、めまいを伴うことがあります」

 救急外来での勤務経験があるという笠木先生は、このようなケースを数えきれないほど診ているといいます。

「救急車に同乗してきたご家族や回復された患者さんに当時の様子を聞くと、大半の方が、めまいやふらつきがあったとおっしゃっていました。例えば“手足が動かない”となったら、誰でも身体に異変が生じていることに気づくはずです。同じように、めまいやふらつきも何らかの病気の兆候である可能性があるということです」

 また、めまいやふらつきの大きな原因のひとつである貧血の陰に病気が潜んでいることも。

「血液細胞の一種ががん化する多発性骨髄腫という病気があります。この病気になると正常な血液をつくることができなくなるため、ゆっくりと貧血が進行していきます。急に貧血が起きれば異変に気づきますが、じわじわと貧血が進むと身体が順応することがあります。その結果、めまいやふらつきを感じるころには病状がかなり進んでいたというケースも珍しくはありません