相続あれこれQ&A

Q 子どももおらず離婚後、独居ですがどんな準備をしたらいい?

 将来のことを考えると心配が尽きませんよね。お金相続、終末期医療、死後の手続きやお墓……。まずは、自分にどんな準備が必要なのか把握を。それにはエンディングノートが最適です。書いてみると、何が決まっていないのかはっきりして、やるべきこともわかってきます。そうすれば、目指す先が見えてきます。甥、姪がいれば自分の法定相続人になりますから、1度話し合っておくといいでしょう。

Q 遺産をもらいつつ、義両親と別の墓に入ることは可能?

 遺産相続とお墓は別問題。お墓に入らないからといって相続の権利に変わりはありません。夫の遺産なら相続できますし、義理の親の遺産ならもともと相続権はありません。ただ、お墓に対する気持ちはいろいろあるかと思いますが、新たにお墓を増やすと、わが子の負担を増やす可能性があることも忘れずに。将来、お墓を守ってくれる人に相談してみましょう。

Q 夫に認知症の症状が。遺言書はどうしたらいい?

 残念ながら、認知症になってから書いた遺言は有効ではありません。まずは、本当に認知症なのか、加齢による物忘れなのか医師の診断を。本当に認知症だった場合、遺言書は期待できませんから、ほかの法定相続人と相続が起きたときにもめないように話し合っておくのがおすすめです。話し合いの前に、専門家(弁護士など)に相談しておくと安心です。

Q 夫が終活をはじめ、公的書類をひとまとめに。よい保管方法はありますか?

 銀行の貸金庫は相続の際、遺産分割協議が終わるまで開けられないことがあるのでおすすめしません。家の中で大事な書類を保管する場所を決めておいたほうがよいでしょう。なお、家の金庫を利用する場合は、家族に開け方を伝えておかないと、いざというとき業者に手数料を何万円も払うはめになることが……。また、盗難に備えて通帳と印鑑は別々に保管を!

Q 夫と死別後、夫の両親と同居。遺産の話はどう切り出せば?

 法律上、嫁は夫の親の法定相続人ではありません。義両親の遺産を相続するには、養子縁組をする、遺言書を作成してもらうなどの手だてが必要です。ただ、こうした話を切り出すのは実の親でさえ難しく、亡き夫のご両親となればなおのこと。ですから、いきなり遺産のことではなく、まずは将来のこと全般について話し合いましょう。お互いの将来に関わる大事なことなので、きちんと時間をとって。

Q 離婚して子どもがいるが居場所が不明。それでも遺言書は残せる?

 親子関係は離婚しても変わりませんから、遺言は残せます。子どもの行方は戸籍の附票を取れば手がかりになりますから、元気なうちに探し出し、相続についてしっかり話しておいたほうがいいでしょう。

相続にまつわる制度》

「親の相続を経験してるから、だいたいのことはわかる」なんて思ってない? 実はここ数年、相続に関係する法改正が続々! 例えば相続税が非課税になる額(基礎控除額)は、前は[5000万円+1000万円×法定相続人の数]までだったのに、2015年からは[3000万円+600万円×法定相続人の数]にダウン。妻と2人で相続する場合、前は8000万円まで非課税だったのに、4800万円までに……。お金持ちにとってはつらい改正になった。そのほかには、妻の長年の苦労に報いるような制度や、遺言を気軽に、でも確実に残せるような制度も登場している。新制度をチェックして、賢く利用したいところ!

・2019年7月1日~ 故人の介護をした嫁がお金を請求できるように
 義理の両親を介護しても、法定相続人でない親族(嫁など)は、遺言書がない限り金銭的に報われることはなかった。しかし、この改正により、相続人に金銭を要求できるように。

・2020年4月1日~ 配偶者居住権の創設
 残された配偶者(結婚期間20年以上などの条件あり)は、所有権を相続するよりも低い金額で家に住み続ける権利を得られる。売却などはできないが、その分ほかの預貯金なども確保できる。

・2020年7月10日~ 自筆証書遺言の保管制度
 改ざんや紛失のリスクがあった自筆証書遺言だが、手数料3900円で最寄りの法務局で保管してもらえるように。この制度を利用した場合、検認も不要に。

(取材・文/鷺島鈴香)


【PROFILE】
福田 真弓(ふくだ・まゆみ)さん ◎税理士。相続と財産の管理承継を得意とし、コンサルティング、講演、執筆などを通じ、お金や家族に振り回されない、豊かな暮らしづくりをめざす。『身近な人が亡くなった後の手続きのすべて』(自由国民社)は累計83万4千部のベストセラー。

武藤 頼胡(むとう・よりこ)さん ◎リンテアライン株式会社代表取締役。終活カウンセラー協会代表理事。終活カウンセラーの生みの親。『終活』を普及すべく、全国の公民館や包括センター(行政)などでセミナーを実施。テレビ、新聞、雑誌などでも活躍。