とはいえ、その失敗から彼女は巻き返す。『総力報道!THE NEWS』終了を機に本格的にフリーになると、原点に戻ったようにぶりっこキャラをアピール。要は、各メディアの需要に応えた結果だろうが、おかげで'14年には「嫌いな女子アナ」1位に返り咲くほどの注目度を回復した。

 '15年には『痛快TV スカッとジャパン』(フジテレビ系)で懲らしめられるぶりっこ女子をコミカルに演じるようになり、'16年にはコミックソングの『ブリカマぶるーす』で歌手デビューも果たすわけだ。

「かわいい」→「面白い」ぶりっこキャラへ

 いわば、ネタとしての強度が増したわけで、ぶりっこもここまでくると、男性にとっての「かわいい」は希薄になる。ただ、そのぶん、女性にとっての「面白い」が加わり、彼女はタレントとして安定していった

 その一方で、'16年には『バイキング』(フジテレビ系)の生放送中に倒れ、救急搬送されてしまう。その後、妹の麻央ががんで闘病中であることが判明し、同情の目でも見られるようになった。

 しかし、'18年に結婚して芸能界をいったん引退する。ここでまた、方向性に疑問を感じさせることとなった。夫・國光吟(くにみつあきら、芸名は「あきら。」)の影響でスピリチュアルな世界に目覚め、いわば“洗脳”みたいな状態に置かれることに。引退したままならまだよかったが、'19年に復帰。そして『グッとラック!』のコメンテーターという、報道的な仕事にもまた手を出したのである。

 おまけに、夫は彼女をサポートするどころか、現場に介入しているとの報道もあり、彼女が降板になる前日には、配信したYouTubeの動画で志らくをこうこきおろしていた。

あのMC、どうかしてますよ。ダッサ。(略)何ごまかしてんだよ、男らしくない。自分が正論言ってると思ってんじゃねぇよ。全然トンチンカンなこと言ってっから

 所属事務所が「なかなか正常なマネジメントができないので」として契約を解除したのも、この夫の存在が影響しているのだろうか。

 なお、あのぶりっこキャラは八方美人な性格に由来するそうで、彼女はこんな自己分析をしている。

基礎は幼少期に。度重なる転校がありました。転校生は受け入れられるために愛想を振りまく努力が必要」(『しくじり先生 俺みたいになるな!!』テレビ朝日系、'16年2月22日放送)

 そんな性格を変えたい思いが、彼女のなかでくすぶっていたのかもしれない。芸能界ではアイドル的に生きてきた女性が、年上のミュージシャンや演出家などから「本当の自分を見せろよ」などと言われて恋におちることもあるが、もしかしたら彼女の結婚もそのパターンだったのではないか。

 しかし、長年ぶりっこでやってきた人が急に路線を変更しても、周囲は戸惑うばかりだ。彼女がドタキャンの理由とした、番組スタッフからのイジメにしても、ぶりっこのイメージがあるだけに、同情目当ての主張にも見えてしまう。しかも、若いうちならいざ知らず、今ではもう、いい歳をしてと相手にしてもらえないのがオチだろう。

 ぶりっこ女子からイタイ40代へ……。「かわいい」の賞味期限が切れた今の彼女には「かわいそう」への境界線を超えてしまった哀しさしかない。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。