批判があれば声をあげることが大事

 加えて、タレントのギャラにも大きな隔たりが。

NHKは民放の10分の1程度のギャラだとも言われています。NHKの言い分としては、全国放送で日本全国に顔が売れるのだから、安くてもおいしいでしょ、と」

 ネットが発展した今、あまりにも時代錯誤な考え方だ。「NHKはもう十分に儲かっているでしょ!」と思わず腹立たしくなってくるが、さらなる野望は続く。

「インターネットが普及し、テレビ離れが進んでいる昨今。テレビ機器を持たず、スマホやPCだけを所持する人も増えてくるでしょう。例えばドイツの公共放送では、スマホやPCを持ったら、1世帯において受信料の支払いが義務づけられていますNHKも、ドイツ型を目指してくるでしょう」

 さらに現在、5割程度といわれているBS放送受信契約率を引き上げ8割に達することができれば、あと2000億円ほどの収益プラスが見込める。民放との格差はますます広がり、NHKは巨大化していく可能性が高いのだ。

「世論から受信料について批判の声があがっているのは、NHKも自覚はしています。それゆえ、3年間で600億円の事業規模削減を行うとの発表も。とはいえ、国民の不満は根本的には解決されませんよね」

 砂川教授いわく、私たち視聴者の側から反対の意見を示す場がないことが、いちばんの制度的欠陥だという。

今は電気もガスも会社を選択することが可能です。ところがNHKは選択権がない。政権よりの報道ニュースに異議を唱えて、視聴を拒否し、受信料を払わない……という行為が許されない状況にあるともいえるのです

 しかし過去に「NHKけしからん」と国民が意思表示をしたことがある。それは2004年、NHK職員による不祥事が相次いで発覚したときだ。視聴者のNHK不信が強まり、受信料の支払い拒否・留保が増えて受信料収入が大幅にダウン。これによりNHKも態度をあらため、改革を進めるための有識者懇談会の設置や大幅な経費削減、2012年にはNHKとしては初めて受信料の値下げをするなどが実施された。

国民サイドも常に監視をして、批判があれば声をあげることが大事そのためにも、合法的に払わない権利が確立されることを望みますね

 政治家と役人とNHKが強固な三角形をつくり、公共放送としての役割を見失いつつあるNHK。批判や抗議をあきらめず、国民ひとりひとりが声をあげ続けることが、大切だといえそうだ。

砂川浩慶さん・立教大学社会学部メディア社会学科教授。日本民間放送連盟に入り、放送制度、著作権、機関紙記者、デジタル放送などを担当し、現職。著書に『安倍官邸とテレビ』(集英社)など。

(取材・文/樫野早苗)