「指原莉乃ちゃんとは、ハンパねぇやつ出てきたなって」――。そう語るのは小島瑠璃子。彼女が「ハンパねぇやつ」と呼ぶのは、ファーストサマーウイカのことである。

 今年1月、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)に出演し「すべらない話」を披露したウイカ。それをテレビで見た小島は「マジか、ここに出るか」と思い、指原とLINEで連絡を取り合ったという(『「任意同行」願えますか?』日本テレビ系、2020年10月15日)。

 かつて、破天荒な活動で知られたアイドルグループBiSに所属していたウイカ。当時はメンバーの1人としてファンからの熱い支持はあったものの、世間一般の注目度はあまり大きくなかったようだ。

 そんな彼女の転機となったのは、2019年1月に『女が女に怒る夜』(日本テレビ系)に出演したときのことだった。それまで1人でテレビに出ることはほとんどなかったという彼女。世間への実質的な“デビュー戦”となったその番組で、派手な見た目に切れ味鋭い関西弁でコメントする彼女は強い印象を残した。

 そこからほとんど時間をおかず、ウイカはまたたく間にテレビの出演本数を伸ばした。今では、テレビのレギュラー番組も複数担うほどに。そして、バラエティー巧者の小島・指原の両人をもってして、「ハンパねぇやつ」と呼ばれるまでになった。果たして彼女の人気の背景には何があるのだろうか。

“珍名”を芸名にしたワケ

 彼女を最初にテレビで見たとき、個人的に最初に目を引いたのはやはりその芸名だった。ファーストサマーウイカ。一際長い片仮名ネームは、彼女がテレビに出始めた際に番組MCが必ずといっていいほど触れるポイントだった。

 本人が繰り返し説明してきたように、その芸名は本名の「初夏(ウイカ)」を英語に直訳して連結させたものだ。「初=ファースト」「夏=サマー」な「ウイカ」。この命名には次のような理由があったと彼女は語る。

「今までに存在してない言葉を、造語を作らなければ勝ち抜けないと思ったんで。『ファーストサマーウイカ』って思いついて(インターネットで検索に)入れたときにゼロ件だったんですよ」(『人生最高レストラン』TBS系、2020年7月11日)

 ネットの海の中で他の情報に紛れないように。自分の名前で検索したときのヒット件数が、そのまま自分の活動の実績値となるように。他とわかりやすく差異化を図って生き馬の目を抜く芸能界を「勝ち抜ける」ように。世の中にない“珍名”を自身の芸名とした背景には、そんな戦略があったという。

 このように、ウイカはテレビで繰り返しタレントとしての生存戦略を語る。たとえば、彼女はテレビで活躍する芸能人を分析し、法則を発見したという。絵でデフォルメ化される存在、アイコン化できる存在、あるいは3つのワードで表現できる存在になれば、間違いなく売れる。

「たとえば、ピンクのベスト、ぴっちりの1:9分け、トゥースとかって言えば、もう(オードリーの)春日さんじゃないですか。そういうワードで、かきあげ前髪、関西弁、ヤンキーキャラって並んだときに、私が出るようになったらいいなと思って」(『あちこちオードリー』テレビ東京系、2020年7月7日)

 ウイカはリサーチし、実行し、改善する。「かきあげ前髪、関西弁、ヤンキーキャラ」をわかりやすく前面に出すだけでなく、出演番組によって髪型や眉毛の形も少しずつ変えているらしい。彼女はテレビの中でPDCAサイクルを回す。いや、彼女のキャラクターに合わせて表現し直すならば、PDCAサイクルをぶん回す。