米倉涼子もNetflixで主演へ

 これに対し、配信ドラマは時間も金もかけている。満島が主演するNetflix『First Love 初恋』の場合、満島にオファーが出されたのは約1年前。寒竹ゆり監督(38)による脚本が完成したあとだった。直後から始まった制作準備には満島も参加。相手役に佐藤を推したのは満島だったという。民放地上波連ドラではあり得ない。

 満島はオファーを受けたころ、「ドラマを作るためにドラマを作っていることにちょっと違和感が募っていた」(Netflixプレスリリースより)という。やはり民放地上波連ドラに疑問を感じていた。これが遠ざかっていた大きな理由に違いない。

 制作費は「1時間当たり1億円程度」(芸能プロ関係者)。制作費をスポンサーに頼るのではなく、世界190か国以上にいる約1億9300万人(7月末現在)の有料会員から得ているから、資金調達は容易だ。ギャラは地上波の2倍は下らない。

 日本の会員数は500万人以上で、月額利用料は800円(税別)。「日本のドラマは日本人しか見ないのでは」という指摘もあるが、そうではないらしい。やはりNetflixが制作し、2019年に配信された山田孝之(37)主演の『全裸監督』も米国を中心に世界的にヒットした。他国のドラマも同じで、2月から配信された韓国ドラマ『愛の不時着』が各国で人気なのは知られているとおりだ。

 役者にとって配信ドラマの魅力は制作費やギャラより、むしろ世界中の人に見てもらえることではないか。Netflixが2013年に配信したケヴィン・スペイシー(61)主演の米国ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は、米国テレビ界の最高の栄誉「プライムタイム・エミー賞」に輝いた。

 今の時代は国際派を目指すなら、配信ドラマへの出演が近道かもしれない。満島も『First Love 初恋』の評判次第で海外からもオファーがあるだろう。

 この作品は1999年に大ヒットした宇多田ヒカル(37)の『First Love』と、2018年の『初恋』の両作品にインスパイアされた大河ラブストーリー。1990年代後半と、2000年代、そして現代と3つの時代が交錯し、野口也英(満島)と並木晴道(佐藤)が忘れられない“初恋”の記憶をたどるという。

 女優の独立とNetflixはくしき縁があるようだ。今年3月に前所属芸能プロを離れ、個人事務所を設立した米倉涼子(45)も、2021年に世界配信されるNetflixドラマ『新聞記者』に主演する。

 こちらの独立理由の1つは「ドラマに主演する際、その条件として同じ芸能プロの人間が出演するのが嫌だった」(芸能プロ関係者)そうだが、個人事務所の女優として配信ドラマに出演する限り、しがらみは生じにくい。独立組の配信ドラマへの出演は芸能界の新たな潮流になるかも知れない。

 さて、満島は今後、どうなるのか。フリーながら第一線で活躍していたのは故・樹木希林さんくらい。満島は希林さんのように唯一無二で、見る側からのラブコールが絶えない存在になれるだろうか。『First Love 初恋』がその試金石になるはずだ。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立