技術&美術スタッフの
レベルが違う

 ドラマの話となると、どうしてもプロデューサーとディレクターに目が向きがちであるものの、ドラマ制作部スタッフの1人は「技術と美術は昔からウチがダントツ。これは他局も認めるはず」と胸を張る。

 確かにTBSドラマの映像は美しく感じる。「照明のテクニックのレベルが高いからです」(同・ドラマ制作部スタッフ)。

 カメラマンは撮る位置を頻繁に変えても嫌がらないという。ディレクターが作りたい映像の実現に向け、技術マンたちは努力を重ねてくれる。技術スタッフにもTBSドラマを支えているというプライドがあるそうだ。

 美術スタッフのスキルが高いというのもうなずける。『半沢直樹』で再現された東京中央銀行本店内の様子がリアルだったのは記憶に新しい。

 制作陣が撮影場所として学士会館(東京・神田錦町)を探し出し、借りることに成功した後、美術スタッフが銀行らしく見える小道具をそろえた。

 『天国と地獄』では綾瀬はるか(35)が扮する刑事・望月彩子の職場である捜査1課や会議室が真に迫っている。十分な広さがある上、掲示板や液晶ディスプレイなどの小道具もハマっているからだ。

 他局の刑事ドラマの中には10畳大ほどのこぢんまりとした部屋で全体会議を行う作品もある。扱う事件のスケールまで小さく感じられてしまい、興ざめだ。

'20年、4月『半沢直樹』のロケに臨む堺雅人と賀来賢人
'20年、4月『半沢直樹』のロケに臨む堺雅人と賀来賢人
【写真】『半沢直樹』のロケ現場ショットが、まるで映画のワンシーン!

1960年代から映像美に拘るディレクターが大半で、撮りたい映像が作れる場所を、見つかるまで徹底的に探す。美術スタッフはその場所に小道具を合わせてくれる」(同・ドラマ制作部スタッフ)
 
 ちなみに『天国と地獄』もよく考えられている。刑事の彩子は高橋一生(40)扮する猟奇的な連続殺人鬼・日高を追う。追い詰めたところで2人の中身(魂)が入れ替わってしまう。こう書くと、気味の悪いオカルト話だが、実際には明るくコミカルで、家族そろって楽しめそうな作品に仕上げられた。

 次に挙げたいのは、TBSと系列会社のTBSスパークルの両ドラマ制作部門がガッチリ一体となっているということ。その分、他局よりマンパワーは強力だ。

 2018年に設立されたTBSスパークルのドラマ制作部門の前身はドリマックス・テレビジョン(旧木下恵介プロダクション)で、『金曜日の妻たちへ』(1983年)などを生んだドラマ作りの名門だ。ドリマックスの時代からTBS系列で連携していたが、スパークルになって関係はより強固になった。両社のスタッフに上下関係や垣根はない。

 日本テレビにもアックスオン、フジテレビにも共同テレビ、テレビ朝日にも東映というドラマ制作上のパートナーが存在するものの、一体化しているとまでは言い難い。局とパートナーの間で軋轢が生じてしまったケースもある。

 一方、TBSTBSスパークルはまるで同じ会社のように、作品ごとに人材のレンタルが行われる。両社間での出向もある。文字どおりのパートナーで、一体となって作品を作り上げている。
 
 他局にも面白いドラマはある。だが、TBS優位の時代はしばらく続きそうだ。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立