黒々としていた頭髪が真っ白に

「具合が悪くなった旦那さんが救急搬送されたんです。前立腺がんと診断され、しばらく入院していました。奥さんの話では、医師から“もうこれ以上は放射線治療を続けられない”と言われ自宅に戻ってきたそうです」

 と前出の主婦。

 近隣住民によると、退院した夫はそれまで黒々としていた頭髪が真っ白になり、精神的にも追い詰められている様子だった。

 夫を長年支えてきた妻は、

「自宅に帰ってきたら、お父さんずいぶん年をとっちゃったのよ。“また具合が悪くなったらどうしよう、どうしよう”とそればかり気にしていて」

 と心配しきりだったという。

 昨年末には、自宅にわざわざタクシーを呼んで、夫婦でショッピングセンターに絨毯(じゅうたん)を買いに行くなど気持ちを切り替えようとする様子もみられた。

「この正月には息子さんが孫娘を連れて帰省していました。そのために絨毯を買い替えたのかもしれません。コロナ禍でもご両親を心配して旅行に誘うなど親孝行な息子さんだけに、親の遺体を見つけるなんて本当に気の毒で」(前出の主婦)

 こまめに掃除、洗濯をして植木鉢の世話を続けるなど「きちんとした女性」(前出・近所の女性)と評される妻。にぎやかな正月が終わってから何があったのか。

 知人女性が打ち明ける。

「奥さんも、がんとは別の病気と闘っていました。旦那さんのがんについては在宅医療の道を選びましたが、3か月待ちと言われたみたいです。つい最近、奥さんと会ったときは、目はくぼみ、ふっくらした丸顔は別人のようにやせこけてしまっていて……」

 周辺住民によると、妻は遺体で見つかる少し前に髪を切ったようで、本来のやわらかい印象を取り戻していたという。きちんとした女性であり続ける身だしなみだったのか。

自宅前には夫婦の死を悼む花が手向けられていた
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◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する