カメラに向かってさまざまなポーズを決めてくれたエンケンさん。見返りイケメン! 撮影/伊藤和幸
カメラに向かってさまざまなポーズを決めてくれたエンケンさん。見返りイケメン! 撮影/伊藤和幸
【写真】凛々しいエンケンから弾ける笑顔のエンケンまで……ここだけの“素”をたっぷりお見せします!

夫への敬意、妻への感謝

 これまでと毛色が違うドラマ映画作品だけでなく、バラエティー番組に挑むきっかけを作ったのも昌子さんだという。だが、当の遠藤は苦手意識もあるようで、

「俺は物事もよく知らないし、さっきも言ったけれど、自分には本当にできないことが多すぎる。そういう素が出てしまうのが嫌いだった。今でも得意ではないし、あんまり出たくないんだけど(笑)。今は時代がうるさくなって大変なところもあるけど、逆に、多少変わった人間だとしても受け入れてもらえる時代でもある。俺みたいなダメ人間も、そのままでいいのかなって。自分のままでいいんだって思えるようになったから、バラエティーにも少しずつ挑戦できている感じですよ

 公私ともにパートナーである昌子さんから見る“遠藤憲一”は、どんな人間なのだろうか。

「精神年齢はすごく低くて、幼稚なんです。でも、こだわりがあることに関しての集中力はピカイチ。過酷な時間帯や環境での撮影が続いても、ずーっと集中し続けている姿を見ていると、偉いなって感じるんです。“普段はしょうもないのに、ちゃんとできるじゃん!”って(笑)。自分の性質に合った仕事ができてよかったね、と思っています。うーん、そうだなぁ……親戚の子どもを見ているっていう感覚に近いのかもしれないですね」

 そう答えてくれる昌子さんの横で、気恥ずかしそうに俯(うつむ)いて笑う夫・遠藤憲一。阿吽(あうん)の呼吸で成り立つ2人の空気感が、その場にいる私たちにも伝わってくるようだった。

 インタビューの最後、遠藤はゆっくりと口を開く。

「今まで女房には、相当ストレスをかけていただろうなって。だから、恩返しをしていきたい。やり方がわからなかったり、下手くそだったりするかもしれないけれど、これから少しずつでも恩を返していかなきゃなって思いますよね」

 それまでのトーンとはまた違い、少し音量を下げた優しい口調。不器用ながらも初々しく紡いだその言葉には、紛(まご)うことなき真実が詰まっていたように思う。

遠藤憲一のダンディなほほえみがたまらない 撮影/伊藤和幸
遠藤憲一のダンディなほほえみがたまらない 撮影/伊藤和幸

(取材・文/高橋もも子)


【PROFILE】
えんどう・けんいち ◎1961年6月28日生まれ、東京都品川区出身。「エンケンさん」の愛称で親しまれ、コワモテな風貌を生かした悪役から、コミカルで愛らしい役どころまで幅広く演じ人気を博す。'01年公開の映画『DISTANCE』で第16回高崎映画祭助演男優賞を受賞。現在、テレビ東京系『バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間』(毎週金曜深夜0時12分〜)に出演中。ほんわかとした日常をのぞき見できる自身の公式インスタグラム(@enken.enstower)も話題に。

【INFORMATION】
東日本大震災の実際の救助映像などを随所に挟み、実話に基づいた家族の絆と人間の底力を描くNHKスペシャルドラマ『星影のワルツ』が2021年3月7日21時より、NHK総合にて放送。出演は遠藤憲一、菊池桃子、川栄李奈ほか。