アイドル衣装で夢を届ける

 20代は雑誌の仕事に明け暮れた。そして30歳のとき、3歳年下のムービーのカメラマンと結婚。その年に長男、34歳で次男、37歳で3男を出産した。その間も仕事はほとんど休んでいないという。

「わが家はまるで合宿所のようでした。夫は仕事で海外に行くことも多かったので考え方が比較的日本人っぽくなくてね。家にいるときは50/50で『僕がやれることはやりますよ』というスタンスで。それに近所のママ友がご飯を作ってくれたり、息子たちを預かってくれたりもして、ずいぶんと助けられました」

 一方、子育てが始まると同時に、西さんは雑誌の仕事に限界を感じ始めていた。

「雑誌の仕事は単純に拘束時間が長い。それに、だんだん洋服メーカーの宣伝マンみたいになっている自分が嫌になっていました。雑誌のファッションページで重要なのは、そのときどきのトレンドを紹介することですよね。すると、流行とはいえ、気乗りのしない服でもコーディネートしなくちゃならないから」

 西さんはテレビ業界に仕事の場を移し、アイドルや音楽系アーティストのスタイリングを手がけるようになる。おニャン子クラブの国生さゆりや河合その子、MAXなどのステージ衣装やCDジャケットを撮影する際の衣装を担当した。

「アイドルの仕事で、私はまた新たなスタイリングの楽しみを知りました。それは、服よりも『人』が主役で、アイドルの個性や魅力に合わせた服を選び、ファッションでキャラクターを表現するということ。

 雑誌では“いかに洋服を魅力的に見せるか”が大事だったのに、ここでは“人”だったんですね。ひとりひとりと向き合い、似合う服を探し出してくるのは大変。でも、その分、本当に似合ったときのうれしさは格別でした。現在私が手がけているドラマや映画のスタイリングの原点とも言えるでしょうね」