親に心配されて悩む官僚志望の学生も

 官僚による不祥事──。千正さんには、過去に苦い経験があるという。

「僕がまだ厚労省の役人だったころ、不祥事が発覚すると、学校で子どもがイジメられたという話も聞きました」

 居酒屋で千正さんが上司と飲んでいると、

「僕らの話の内容でほかのお客さんに官僚だとバレて“お前らが日本を悪くしている!”と、からまれたことも」

 ブラックな労働環境で、若手の離職率はこの6年で4倍に。不祥事が起きれば、バッシングの嵐……。新人官僚の東大出身者は、5年前に比べて約半分に激減している。

「官僚志望の学生から相談を受けるのですが、親が心配して“過酷だからやめたほうがいい”と言われて悩んでいる子もいます」

 政策を通じて国民の生活がよくなるために貢献するのが、官僚の仕事の魅力。

「いま注目されているコロナワクチンの手配も、官僚たちが段取りをつけて国民全員に行き渡るように頑張っています」

 官僚に優秀な人材が集まらなくなったら……いちばんソンするのは国民なのだ。

■霞が関のブラック事情

(1)残業は過労死ライン超えが4割以上
 公式発表では残業月30時間。だがサービス残業が常態化しているため、民間調査では過労死ラインが4割以上。

(2)メンタル休職は民間の3~4倍
 民間企業が0.4%に対して、国家公務員は1.39%。

(3)離職率は10年前の4倍
 20代キャリアの離職者数は'13年度21人だったが、'19年度では87人に。

(4)東大出身の割合が約半分に激減!
 国家公務員総合職試験申込者数を見ると、東大出身の割合は'15年度26.6%、'20年度14.5%。

官僚が本当に能力を発揮できるようにするにはどうすればいいのかを千正さんが具体策を提言した一冊。新潮社刊 ※記事内の画像をクリックするとamazonのページにジャンプします
【写真】厚生労働省に18年半勤めていた元官僚・千正さん

千正康裕さん '01年厚生労働省入省。社会保障・労働分野で8本の法律改正に携わる。'19年9月退官。現在はコンサルティングを行うほか、政府会議委員も務める。著書に『ブラック霞が関』(新潮社刊)