タイトルからにじむ軽さとコミカル

 あえてコメディとして放送しているのは、シリアスなタッチで離婚を描くと重くなりすぎるからであり、そこにコロナ禍の深刻さが加わってしまうからだろう。実際、『リコカツ』に出演している永山瑛太が2013年に主演を務めた『最高の離婚』(フジテレビ系)も、シリアス一辺倒になることを避けるように、コメディタッチで描かれていた。

 また、離婚を特別なこととしてシリアスに描かず、普通のこととして扱うための工夫がタイトルからもうかがえる。『離婚活動』『離活』ではなく、ポップな印象のあるカタカナで『リコカツ』という表記を使い、脱力感を抱かせる『大豆田とわ子』という名前が採用されたのは、視聴者に軽さやコミカルな印象を持たせるためだろう。

 コロナ禍の重苦しいムードが続く中、リアリティばかりを追求していては視聴者の心をつかむことはできない。だからこそ両作とも、笑いを交えたエンターテインメントとして物語を進め、最終話では「登場人物たちがすっきりとした気持ちで前に進んでいく」というポジティブな結末が予想できる。

 つまり、スタートの時点では「離婚」に伴うシリアスなイメージがあったものの、「終わってみたらコミカルでポジティブなドラマだった」と思わせてくれるのではないか。その意味で視聴者サイドにしてみたら、「他のラブコメと同様に安心して見続けられるドラマ」と言い切ってもいいだろう。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
 ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。