会社にも学校にも町内会にも、その手の人はいるのである。

 人に厳しく、自分に甘いーーそんなタイプの人が!

 連日、テレビに登場し、医療崩壊の危機感をあおってきた日本医師会の中川俊男会長も、そんなタイプだったか。

 先月、都内で開かれた自民党の自見英子参院議員の政治資金パーティーに参加していたことが、国民を呆れさせている。

 今年3月、コロナ禍で厚生労働省の職員が送別会で深夜会食した際には、

「耳を疑った」と指摘。さらに、

「今回の無自覚の行動は、国民への背信であると同時に、医療関係者や同僚である厚生労働省の職員の努力を踏みにじるものであると私は思います」

 と最大限の厳しさで糾弾したのである。

政治家は自宅で死ぬことはない

 他人に厳しいその言葉は今、ブーメランとして中川会長を襲う。タレントの坂上忍は、MCを務める『バイキングMORE』(フジテレビ系)で「この人の言葉は聞きたくない」とばっさり切り捨て、日本医師会の浄化作用に期待した。

 中川会長も定例会見で「慎重に判断すればよかったと思っている」と釈明したが、後の祭り。潔く辞任すれば、それはまた評価も高まったことだろうが、地位を手放す気配はない。

 今月、片山さつき参議院議員は小池百合子都知事が県境を越える移動の自粛を訴えていることをあざ笑うかのように、静岡県浜松市で行われた「浜松まつり」に同僚議員と参加し、叩かれている。

コロナ禍のGW、県境を越え堂々と浜松まつりで凧揚げをする片山さつき(本人のFacebookより)
コロナ禍のGW、県境を越え堂々と浜松まつりで凧揚げをする片山さつき(本人のFacebookより)

 菅首相・二階幹事長・みのもんたらによる“ステーキ会食”が行われた昨年12月以降、石破茂元幹事長の“ふぐ会食”、松本純衆議院議員の銀座会食、滋賀県知事のゴルフコンペ、沖縄県知事のバーベキューなど、ルールを守らない政治家らは後を絶たない。

「バレたからといって議員辞任したのは、公明党の議員くらい。離党したとしても職を失うわけではないですからね」

 と民放報道部記者は冷ややかに見る。さらに安全地帯で暮らす政治家や医師会会長と国民との意識の差を次のように指摘する。

万が一感染しても、自分はきちんと治療を受けられるという安全地帯にいる人ばかりなんです。今、大阪などでは命の選別が行われ、治療も受けられずに自宅で亡くなる人も増えている。政治家や医師会会長が、自宅で亡くなることはありますか?

 さらに言えば、一般の患者は、医者にかかれたとしても、感染症の専門医にかかれるとは限らない。一般の医者にかかれるのと感染症の専門医にかかれるその違いは、一般のドライバーとF1ドライバーぐらい技術的な差がある場合もある。

 感染したとしても、保健所の連絡を待つ心配のない立場にあるというだけで、政治家も医師会会長も、医療崩壊とは無関係なのです。万が一感染しても、感染症の専門医にかかれる患者はそれだけで選ばれた国民なんです。だから感染を恐れず、会食したりパーティーに参加したりできるのだと思いますよ

 内情を聞けば聞くほど腹立たしくなる日本医師会会長や政治家の、耐えられない特権意識。国民はひたすら変異株を恐れ、慎ましく暮らすしかない。

〈取材・文/薮入うらら〉