女性進出が遅れている日本企業を批判気味に報じてきたテレビ局が、この体たらくである。

 民放の女性役員はわずか2.2%。民放労連女性協議会が先ごろ発表した調査結果で、テレビ局が男性社会そのものということが明白になった。

女性の能力を判断するのがほぼ男性

 在京キー局はさらに最悪で、報道、制作、情報政策部門の局長に女性が登用されているケースはゼロ。日本テレビフジテレビに至っては、女性役員がゼロ!というありさまだ。

 一般紙放送担当記者は、

「能力本位の起用、というのが企業側の論理ですが、女性の能力を判断するのがほぼ男性、というのがまずいびつ」

 とバッサリ。そのうえで、

「こういう場合、能力がなくても数合わせで女性を起用するのはいかがなものか、という指摘が必ずといっていいほど出ますが、局長クラスにもゼロというのは、揃いも揃って異常事態。会社の教育システムに問題があるのか、人事システムに問題にあるのか、と疑念を抱かれても仕方ない。キー局は言い逃れできないと思いますよ」 

 ほとんどキー局のニュースサイトはこの問題を取り上げていない。たいした問題ではないと判断したのだろうが、「都合の悪い問題には触れない」と指摘されても無理はない。唯一テレビ朝日だけが、民放労連の調査結果を報じていた。

 女性の進出を数だけで見れば、テレビ局内は女性が多い、と言える。実際、局内を歩けば一目瞭然だ。

「確かにそのとおりですが、ほとんどが制作会社からの派遣スタッフで、言ってみれば下請け。チーフディレクターやプロデューサーは、ほぼほぼ男性で、しかも局員が多く、このご時世でも平気で女性スタッフに対して『オマエなぁ』という呼び掛けが日常的に行われていますよ。パワハラギリギリです」

 テレビ局のズレきった現実をそう証言するのは、情報番組スタッフだ。さらに、

「実はもっとひどい状態を目撃できますよ」

 と、次のように明かす。

「最近、どこのテレビ局も持続可能な開発目標に着眼し、SDGs関連の番組を作ったりしています。しかしテレビ局ほど、エネルギー問題に無頓着な場所はありませんよ。スタッフルームなんて、その部屋に誰一人いなくても、朝まで一晩中電気がついているんです。そればかりか、そこにはNHKやキー局を映すテレビが10台近く置いてありますが、全部つけっぱなしです。あり得ますか? 電気を消すという習慣というか責任がないのです」

 女性登用の遅れにエネルギーの無駄遣いだけを取ってみても、テレビ局の前近代的な姿勢は明らかだ。テレビはオワコン、と視聴者に見捨てられず、これからも持続可能なメディアであり続けるためには、現状に甘えて胡坐をかいていてはダメだろう。

〈取材・文/薮入うらら〉