それは果たして正義なのか

「人の不幸に便乗している感が否めないし、コロナで困窮する女性たちをここまであからさまに“ネタ”として使っているところに、見ている方は不快感を抱いてしまうんだと思います。集客できればなんでもいいみたいな、そのお店のスタンスにイラッとくるのかもしれません」

 そう話すのは性愛、ジェンダー問題などを取材、執筆し、AVや風俗業界の事情にも詳しいライターのアケミンさん。こう言葉を続ける。

「品がないといいますか、ちょっとモラルがないなと。昨年の(ナインティナイン)岡村隆史さんの失言を思い出しましたね」

 岡村の発言といえば、昨年、自身のラジオ番組で「コロナが明けたら、なかなかのかわいい人が、美人さんがお嬢(風俗嬢)やります」などと発言、炎上した件。皮肉にもその発言が現実になってしまったということになる。

「コロナ不況の不幸を売りにして、しかもそれを“人助け”という善意として集客をしているわけですから、抵抗を感じる人がいるのは、当然のことだと思います。それはお店側もわかっているはず。でも、批判があったほうがこうやってSNSで話題になったり注目を集めますし、炎上商法と似たようなものを感じます」

 その言葉通り、ツイッターでは批判とともに店の情報が拡散され、それが却って宣伝につながっているようにも感じる。

 さらに、それらの問題とそこで働くセックスワーカーの存在は切り離して考えるべきだとアケミンさん。

だからデリヘルがダメという話ではないし、セックスワーカーそのものを否定してはいけない。先日、立川では風俗で働く女性が殺害されるという痛ましい事件もありました。彼女たちの労働環境やセキュリティについても、深刻な問題になりつつある。そこは慎重に考えるべきです。

 コロナでお金に困っている女の子たちがいるのも事実。とても難しい問題だと思います」

 今後、こういうお店はどんどん増えていくのだろうか。

「デリヘルとか風俗店の名前って、キャッチーなものだったり、その時々の事由でもじったものが多いんです。その悪ふざけが過ぎたのが“不況女子”なのかなと。そういった、ネーミングで遊ぶみたいなところは昔からあるので、似たようなお店は出てくる可能性はあると思います」

 店側は本当に女性たちを救いたいという正義感があるのか、はたまた、それもただのコンセプトとしての延長線上なのか、ネットでの賛否両論を受け、こんなことを発信していた。

<「コロナは偶然だから仕方ない」偶然に起きたことに対して、保障を国はしてくれません。だからこそ私達は正直に、真っ当にこの状況に立ち向かうことを決意しました>(ツイッターから一部抜粋)

 さらには、女性が働きやすい環境として、指名料・特別指名料の全額報酬扱い、雑費は店が全額負担なども約束していることを見ると、一見、親身になって女性たちのことを考えているようにも思えるがーー。

 支援とはいったい何なのだろう。彼女たちに本当に必要な“支援”が、行き届くことを祈るばかりである。