朝の混雑した電車内で20代女性のスマホから、

「やめてください、やめてください、やめて……」

 と大音量のアナウンスが繰り返し流れた。

 その音声をきっかけに周囲の乗客が痴漢を取り押さえ、“地獄の時間”は終わった。

「9月15日午前9時ごろ、赤羽―池袋間を走行していたJR埼京線の最後尾車両の出来事です。通勤中の被害女性はドア付近に立っていて5人ぐらいの男に不自然に取り囲まれていたといいます。乗客は痴漢行為を現認した2人を池袋駅で駅員に引き渡しました。女性を前後で挟むかたちで同時に痴漢をはたらいたこの2人に面識はありませんでした」(全国紙社会部記者)

 車内で痴漢をしたとして警視庁が強制わいせつの疑いで逮捕したのは、埼玉県川口市に住む映像制作会社の契約社員・加藤義郎容疑者(34)。便乗して下半身を押し当てた50代の無職男を東京都迷惑防止条例違反(痴漢)の疑いで逮捕した。

 いずれも容疑を認めている。

「加藤容疑者は“若い女性がいたのでムラムラと欲情して触った”などと供述し、背後から下着の中まで手を入れるなど悪質でした。過去にも埼京線で何回か痴漢をしたと認めています。50代の男は、女性が男たちに囲まれて触られているのに気づき、電車の揺れを利用してその輪に加わると、正面から下半身を押し当てました。膝を曲げた不自然な体勢で押し当てる位置を調整し、顔は被害女性にぶつかりそうなほど近づけていたそうです」(前出の記者)

 他の乗客が痴漢成敗に踏み切れたのはアプリ起動があったから。2016年3月に警視庁が導入したスマホ用の無料防犯アプリ『デジポリス』で、行政アプリとしては異例の50万ダウンロードを突破するなど活用が広がっている。

 痴漢撃退機能は、声をあげにくい被害者の代わりにスマホが音声で拒絶してくれるほか、いきなり音声を流すことに抵抗がある場合は《痴漢です 助けてください》と表示された画面を周囲に見せる。

 逆に、周囲の乗客から《ちかんされていませんか?》と表示した画面を無音で被害者に見せ確認できる機能もある。

 下劣な犯行で見知らぬ年上男とタッグを組んだ加藤容疑者は、実家で両親と3人暮らし。近隣住民らによると、ほとんど近所付き合いしない一家で、加藤容疑者は「謎の存在」(近所の女性)という。

自分からは挨拶しない…痴漢男の素顔

「毎朝カジュアルな格好でかばんを持って出勤していたが、どんな仕事をしているのか見当がつかなかった。猫背でボソーッとした様子で下を向いて歩き、自分からは絶対に挨拶しない。人目を避けているようだった」(近所の男性)

 なぜ集団痴漢に加わったのか。痴漢事件に詳しいジャーナリストはこう話す。

「2009年ごろをピークにインターネットの掲示板で集団痴漢を予告して仲間を募る書き込みが相次ぎ、社会問題になった。当時、混雑が激しく、片側のドアが開かない時間が長いなどの理由から狙われたのが埼京線。日時や車両、ターゲットの女性に言及するケースもあった。本件の経緯は捜査の進展を待つしかないが、掲示板をきっかけとする埼京線の集団痴漢は17年に当時30ー40代の男4人が逮捕され、18年には兵庫から上京した男を含む30代2人が逮捕されている。男たちはいずれも初対面だった」

 周囲に女性を守る人が増えれば増えるほど、卑劣な痴漢どもを徹底的に追い込むことができるだろう。