3人目は新宿駅から乗ってきた建設業の高原勲さん(仮名・37)。自宅は杉並区にあるので乗車時間は15分前後のはずなのだが……。

 青ざめた顔をして言った。

「お客さんの会社で飲んでいたんですが、飲みすぎちゃいましたね。久しぶりのお酒だったので、酔いが早く回ったのか、いや、飲みすぎたかな……。妻に電話したら怒られちゃって(苦笑)」

うっかり寝過ごしてしまうと、途方にくれることになる(写真はイメージです)
【写真】コロナ禍でも酔っ払い寝過ごし客が絶えない大月駅

 生まれたばかりの子どももいるという高原さん。

「仕事の飲み会も付き合いもみんな家族のため、仕事のため。なのに、あんなに怒らなくても……」

 所持金が乏しいという高原さんは深夜営業しているカラオケに向かって歩いていった。

“外飲み”はしていないが……

 さらに緊急事態宣言下で最後の金曜日、酒類解禁の是非が議論される6月11日再び大月行きの最終電車に乗った。

 そこでは初の女性乗り過ごし客、小川弘美さん(仮名・47)と出会った。人けのない駅周辺。女性はいささか心細さもある。小川さんも前出の高原さん同様『会社飲み』で乗り過ごしたひとりだった。

「久しぶりに乗り過ごしまして……。いくらかかってもタクシーで帰ります。主婦なので明日もありますから……」

日中の大月駅は観光客でにぎわう。地域の人からは深夜うろつく酔っ払いを心配する声も

 実は高原さんや小川さんのような『社内飲み』をする企業が少なくないという。飲食店や路上飲みへの視線が厳しいため、会社内に酒を持ち込みそこで飲み会を開くというのだ。

 コロナ禍で募る寂しさやたまるうっ憤、同僚と愚痴を言い合い飲みたい気持ちは十分理解できる。だが、社内での感染拡大やクラスター発生の危険も伴うのではないだろうか……。

 さらに乗り過ごしは家族も巻き込む事態に発展する。

 同僚と渋谷で飲んでいたという公務員の安田稔さん(仮名・31)は妻が八王子から迎えに来てくれると苦笑い。

「怒られましたが本当にありがたいです」

 この日、乗り過ごしたのは5人。最後に話を聞いた足立区の川田一郎さん(仮名・55)は背負ったカバンは半開き、へべれけ状態だった。

「会社の後輩たちに呼ばれて立川で飲んでてね。反対方向に来ちゃったのよ」