家族の介護には第三者を入れたい

綾菜 安藤さんは、芸人さんになってからも介護のお仕事をしていたんですよね?

安藤 20歳のときに『ホームヘルパー2級』(現在は『介護職員初任者研修』の資格を取って、深夜の巡回介護をしていました。週に3回、15軒から20軒のお宅の鍵を預かって、おむつ交換や安否確認をするんです。

綾菜 おむつ交換って、私、資格を取るための授業でやったことはあるんですけど、実際に経験したことはないんです。大変ですよね?

安藤 きっとびっくりすると思います。頭の中ではイメージできていても現場では全然違うんです。私も初めて、大人のおむつ交換を経験したとき、それまでの知識は全然役に立たなくて「これはやってみないとわからないな」とつくづく思いました

綾菜 私も、加トちゃんがおむつをするなんて全然想像できないんですが、いつかそんな日も来るかもしれません。そのときに気持ち的に引かないで、持てるすべての愛を注いで対処するには、今から経験しておかないと、と思うんです。それもあって、現場で働きたいんですよね。

安藤 ご主人も幸せですね。でも、もしご主人が倒れるようなことがあったら、ひとりで介護したいですか?

綾菜 いいえ、どんどん人に頼りたいと思っています。

安藤 家族を介護するのと、他人を介護するのは全然違いますからね。家族が衰えて何もできなくなっていくのが許せなくなることも。許せないというのも実は悲しみの裏返しで、事実を受け入れるのがつらいんですよね。

綾菜 以前、加トちゃんが病気で倒れて大変な状態になったときは、弱った彼を誰にも見せたくないと思ったんです。その気持ちが強すぎて、2人きりで家に引きこもり状態でした。介護の勉強をするようになって、私は何があっても自分1人でやろうとしちゃうけど、それではダメだと気づかされました。いろんな人の手を借りたほうが、自分にも余裕が生まれて、愛情深く介護できると思います。

安藤 家族の世話を人に頼むのはよくないという風潮がありますが、そんなことは全然ない。そのほうが、介護される側も楽しく過ごせることもあると思うんです。もっと人に介護を頼むハードルが低い社会になるといいですね。