昔は修学旅行で訪れた中学生や高校生が訪れる定番スポットでしたよね。自由時間がスタートすると、目当てのアイドルのブロマイドを買いに走る女子学生たちの姿がよく見られました。今はコロナ禍で修学旅行もありませんが、それ以前からほとんど見なくなりましたね。まぁインターネットで検索すると写真はいくらでも出てくる時代ですから」(アイドル誌編集者)

 アイドルの写真やグッズを販売しているアイドルショップ。東京原宿の竹下通りには、過去には100店舗以上ものショップが通りに軒を連ねていた時代もあったが、今ではたったの数店舗にまで減少している。

 今もアイドルのプライベート写真が本人の許可なく勝手に売られているが、法律的には問題ないのか。知的財産権に詳しい『甲本・佐藤法律会計事務所』の甲本晃啓弁護士に話を聞いた。

「芸能人の写真販売について問題になるのは、著作権と肖像権です。まず、著作権は撮影したカメラマンの権利になりますので、カメラマンの許可があるなら問題はありません。次に、肖像権ですが、こちらは権利の侵害に当たるので違法です

 肖像権とは、基本的人権のひとつで、自分の顔を勝手に利用されないという権利だ。芸能人の場合には、その写真や氏名を使用することで経済効果が生み出されるため、一般人の肖像権と区別する意味でパブリシティ権と呼ばれる。

「CMでは、起用した芸能人のイメージを使い商品のPRをしますが、それに伴い出演料が発生しますよね。芸能人の写真の利用ついても同様で、商品である芸能人の写真を販売しているのですから当然、料金が発生する。それなのに許諾を得ないで販売すればパブリシティ権の侵害になるわけです。民事訴訟になったら損害賠償まで認められるでしょう。

 また、刑事罰については公式な写真やグッズと誤認するような販売をした場合には不正競争防止法違反として処罰される可能性はありますが、刑事事件で裁かれることは稀でしょう」

 CM1本の出演料は、人にもよるが数千万円という金額になることも。写真と言えども、勝手に売ったら損害賠償の金額も、高額になるのか。

「権利者が本来販売して得られたであろう利益が、損害賠償額になります。例えば公式ショップで木村拓哉さんの写真が1枚1000円で売られているとき、木村さんの写真を1000枚売ったのなら、損害賠償額は100万円になります

警察が動けない“野放し”の現状

 だが、店側が売った枚数を正確に申告するなんてことは考えにくいが……。

「会計帳簿の確認や、外部に印刷の発注をしているのなら発注先に確認して算出することができます。しかし、最近では家庭用でも高性能なプリンターが簡単に手に入る時代です。フリマアプリを使って個人で印刷・販売をしているケースもあるでしょう。そうなると、何枚売れたのかを算出することは難しくなってきてしまいます」

 ほかにもこんな問題が。

裁判の費用は最低でも50万円はかかります。そのほかに手間も時間も必要になる。訴えたとしても、先に話したように今は販売数量の立証が難しい。仮に裁判に勝っても、店舗側が逃げてしまえばお金の回収もできないわけです。また、刑事罰となる場合も限定されているため、警察も動きにくい。そのため野放しになっているということなのではないでしょうか」

 とはいえ、印刷した写真を持つという文化がなくなりつつある。芸能事務所側が手を下さずとも、竹下通りからアイドルショップが消えるその日は遠くないのか――。