11月23日、大相撲九州場所の千秋楽で、ウクライナ出身力士として初の優勝を果たした安青錦新大。
大関昇進の年少記録は白鵬に次いで歴代4位
「ウクライナで通っていた地元の柔道クラブで、7歳のときから相撲を始めました。日本で大相撲の土俵に立つことを夢見て練習に励んでいた最中、2022年2月からロシアによるウクライナ侵攻が始まり、両親とともにドイツへ避難。
しかし、力士への夢を捨てきれず、日本への移住を決め、同年4月に来日。同12月には安治川部屋に入門。2023年の9月場所で初土俵入りを果たして以降、急速に番付を上げている期待の新星です」(スポーツ紙記者)
初優勝を経て、11月26日に晴れて大関の座に就いた安青錦。21歳8か月という大関昇進の年少記録は、白鵬に次いで歴代4位となり、現役力士としては史上最速でのスピード出世。「大阪安青錦後援会」発起人の中尾優司さんは、こう語る。
「安青錦は自由時間も外で遊ばず、部屋で黙々と練習していると聞いています。場所を重ねるごとに強くなっており、安治川親方(元関脇安美錦)も『期待している』と。3回優勝したら横綱も夢ではないと思っています」
単身ウクライナから日本に来た際、下宿先として自宅に招くなどして日本での足がかりを手助けした“恩師”といわれる関西大学相撲部コーチの山中新大さんにも話を聞いた。
「彼はおとなしいほうでまじめですが、自分の意志をしっかりと持ち、周りに流されず、自分が正しいと思うことを貫くタイプです。普段は物静かですが、家族や友達とは話すのが好きで、よくコミュニケーションを取っていました。日本の文化を理解しようという努力もしていましたし、稽古の前に週2回ほど日本語教室にも通っていました」
また、今回の初優勝については、
「取組が終わってすぐ彼から電話があって、『優勝することができました』と報告してくれました。優勝したことは、すごくうれしいです。彼自身も優勝インタビューで話していましたが、もう1つ上の番付“横綱”を目指して頑張ってほしいです。それだけでなく、支えてくれた人たちへの感謝を忘れず、みんなのお手本になるような力士になってほしいです」(山中さん)
安青錦の優勝の知らせは、日本で暮らすウクライナ人にも広まり、多くの人が喜びと誇りをもって祝福している。NPO法人日本ウクライナ友好協会が運営するカフェ「KRAIANY(クラヤヌィ)」で店長を務めるリセンコ・ナタリアさんは、
「ウクライナは大変な時期ですが、ウクライナ人はハートが強いんです。彼が優勝したことは、私たちの誇りです。感謝しかありません」
と、感無量。安青錦が以前、このカフェを訪れたときのことを思い出し、
「ウクライナ人って、アピール上手というか明るい人が多いんですけど、彼と話した印象はシャイでまじめという感じでした。でも、1か月ほど前にお店に来てくれたときに“いつも日本料理だから、故郷のウクライナ料理が食べたい”と言って、“おばあちゃんの作ったボルシチみたいでうれしい”とウクライナ料理を笑顔で食べていきました」(ナタリアさん)
来日から約3年半の月日が過ぎ、相撲界で着実に存在感を増してきている安青錦。しかし、ウクライナへは一度も帰国できていない。“故郷の料理”を懇願するのは必然だろうが、初優勝の味も存分に噛みしめているだろう。











