イライラ解消にも最適

 本書の魅力はその没入感にもある。発売時に開催したオンラインライブイベント“朝まで地図なぞり”には延べ800人が参加。20時から翌朝4時まで8時間にわたりひたすら夢中で地図をなぞる様子を生配信し、反響を呼んだ。またSNS上でも“心が整う”“座禅と似た効果がある”“時間を忘れてしまう”と、無心に浸る醍醐味を挙げる声が多く寄せられている。

「なぞっていると頭が空っぽになる。リモート会議が続くと頭が疲れて、それをリセットするのにちょうどいい。ちょっとイライラしたことを思い出しても、なぜかそんなに腹が立たない。ストレス解消になるので、僕も仕事でキーッとなったときによくなぞってます(笑)」

 さらに上級者になると、書き込みや色でアレンジするなどオリジナル化するファンも。

「旅の記憶やお店を書いても楽しい。地図は誰でも共通のものだけど、自分だけのエピソードを書き込むとオリジナルのものに。人生が凝縮された一冊になるかもしれません」

 その醍醐味を知るには、まずは実践第一。林さんおすすめの「地図なぞり」をご紹介します。じっくり線をなぞるうち、いつしか心が整っている自分に気づくはず!

海峡の地図なぞりにトライ!

 お気に入りのペンを用意したら、いざ地図なぞりにトライ! ひと筆書きでなくてもOK、なぞる過程を楽しむのが大切。なだらかな海岸線や奥深い入り江など長い時間をかけて形作られた自然の神秘に、トンネルの位置関係やそれが果たす役割など、なぞることで改めて発見する地図の楽しさも。1cm1秒ほどのスピードでゆっくりなぞるのが没入感を味わうコツ。

【津軽海峡】北の大地を思い浮かべて旅情をかきたてる海峡なぞり

 北海道と本州北端を隔てる津軽海峡。両者を結ぶ青函トンネルは全長53.85km、海底部の距離は23.3kmと海底トンネルとしては世界最長で、北国への旅を思い浮かべながらなぞるのも味わい深い。難易度は★3つ(★5つで評価)。

【津軽海峡】北の大地を思い浮かべて旅情をかきたてる海峡なぞり
【津軽海峡】北の大地を思い浮かべて旅情をかきたてる海峡なぞり
【写真】印刷してできる「海峡の地図なぞり」でイライラ解消!

【関門海峡】瀬戸内海と日本海をつなぐ難所。ハラハラの航行を疑似体験

 本州と九州を隔てる関門海峡は、客船やタンカー、貨物船が多く行き交う海上交通の要所。しかも最も陸の近い壇之浦と和布刈の間はわずか幅670mと航路の上級コースで、なぞればその難度の高さを実感することができる。

【関門海峡】瀬戸内海と日本海をつなぐ難所。ハラハラの航行を疑似体験
【関門海峡】瀬戸内海と日本海をつなぐ難所。ハラハラの航行を疑似体験
『日本地図をなぞって楽しむ 地図なぞり』(ダイヤモンド社、1210円)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
お話を伺ったのは……●林 雄司さん●1971年生まれ、東京都出身。会社勤めの傍ら'96年個人サイト「東京トイレマップ」「Webやぎの目」を、2002年「デイリーポータルZ(DPZ)」を開設。著書に『死ぬかと思った』など。

(取材・文/小野寺悦子)