画一的な日本人像になるワケ

 また、役の設定だけではなく、「日本兵を演じるにしても基本的に悪役がセオリー」と話すように、キャラクターの立場も紋切り型だったと笑う。実際に自身が演じた役を例に挙げて教える。

「ある短編映画に出演した際、抵抗の意思がない日本兵を、逆上したアメリカ人の兵士が銃殺するというシーンがありました。『一切抵抗はしない。死んだも同然だ』というセリフだったのですが、完成して字幕を見ると、『お前らは全員死ぬ。この船は沈む』と表示されていた(笑)。

 悪役が定石ですから、そういったニュアンスにしないと受け入れられないということで翻意になった。こういったことは珍しくありません」

 ところが、戦争映画においても『HEROES/ヒーローズ』のように流れを変える作品が現れる。クリント・イーストウッドが監督を務めた『硫黄島からの手紙』だ。

職業軍人として描かれるだけではなく、日本兵ひとりひとりに家族がいてドラマがある。『硫黄島からの手紙』によって、日本兵を描く場合、人間に近づけなければいけないという意識が広がった

『硫黄島からの手紙』ジャパンプレミア。左から二宮和也、渡辺謙、クリント・イーストウッド、伊原剛志、加瀬亮
【写真】海外ドラマの撮影現場にあった謎の日本語掛け軸「ハブ薬局」

 同作品が公開されたのは2006年。つい15年前まで、ハリウッドの固定観念が根強かったとは驚きだ。

「製作陣が特定のキャラクターを日本人にする理由は、日本人であるがゆえに特定の何かをさせることでストーリーを進行させるという狙いがある。ですから、画一的な日本人像になる」

 ゾンビ映画でカップルが登場する際はおおかた悲惨な死を遂げる─ではないが、日本人も同じように「記号」として扱われていたというわけだ。

 寿司職人、日本兵、サラリーマン、サムライ以外で日本人が描かれる、いうなれば変化球の日本人が突然変異で描かれることもある。

 映画ライターのよしひろまさみちさんは、「ハリウッドは、その時代にいちばん景気がよかったり、注目を集めている場所にフォーカスしたりする傾向が強い」と指摘する。

「『ブラック・レイン』は、バブルで盛り上がる日本を牛耳る存在としてのマフィアが描かれている。また、『ダイ・ハード』ではナカトミビルという名のビルが登場します。日系企業という設定で、社長も日本人。そこにテロリストが乗り込んでくるお話。現在のハリウッドにおける中国のような存在だったと言えば、想像しやすいかもしれません。そのときイケイケの国を題材にするため、'80年代は日本を扱ったハリウッド作品が少なくない」(よしひろさん、以下同)

 今年公開された『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』で、東京が登場するのにも理由があるという。

ワイルド・スピードシリーズは、中東やリオデジャネイロ(ブラジル)という具合に、そのとき観光などで盛り上がっている場所を舞台にします。コロナ以前は、多くの外国人が日本を訪れたいと思っていましたし、東京を舞台にした第3作と関連性をもたせることもできる。そういったことを鑑みて、日本が取り上げられたんでしょう

大人気の『ワイルド・スピード』シリーズ