いろいろな日本人がいることを発信すべき

 漂う閉塞感。だが、光明がないわけではない。今年10月から、ディズニープラスで『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)が国内だけではなく世界に配信される。責任あるポストに就く人物が女性だったり、外国人の就労問題をテーマにしたりと、現代の日本を描いていることも話題となった作品だ。主演・鈴木亮平に英語を指導した松崎さんも期待を寄せる。

日本人といってもいろいろな日本人がいるんですよということを、発信していかなければいけない。こういう取り組みが増えれば、日本人の魅力が画一化することも減ってくるのではないか」(松崎さん)

『MINAMATA』では、日本人像がどのように描かれているのか─その点に注目しても面白いかもしれない。

 最後に、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』でジョニー・デップと共演している松崎さんに、彼の印象を尋ねると、

本当に気さくな人。スーパースターとは思えないほど、フレンドリーで驚いたくらいです。撮影の合間に雑談をしていたら、『日本を訪れたら東急ハンズという店へ行ってみたいんだ』と言っていました。今度来日した際は、東急ハンズに向かうかもしれませんよ」(松崎さん)

 日本には、ハリウッドスターを夢中にさせるものがあふれている。

 だからこそ、こちら側からハリウッドをアッと言わせるような土壌があることや、作品を発信していかなければいけない。

●代表的な日本を舞台にしたハリウッド映画 

1955年『東京暗黒街・竹の家』ロバート・ライアン、山口淑子、早川雪洲
1956年『八月十五夜の茶屋』マーロン・ブランド、グレン・フォード、京マチ子
1957年『東京特ダネ部隊』オーディ・マーフィ、志摩桂子、斎藤達雄
1958年『黒船』ジョン・ウェイン、安藤永子、山村聡
1961年『太陽にかける橋』ジェームズ・シゲタ、キャロル・ベイカー、丹波哲郎
1966年『海底大戦争千葉真一、ペギー・ニール、フランツ・グルーバー
1966年『歩け走るな!』ケーリー・グラント、サマンサ・エッガー、高美以子
1967年『007は二度死ぬ』ショーン・コネリー、若林映子、浜美枝
1973年『ザ・ヤクザ』ロバート・ミッチャム、高倉健、岸惠子
1978年『がんばれ! ベアーズ大旋風 -日本遠征-』トニー・カーティス、ジャッキー・アール・ヘイリー、若山富三郎
1983年『ニンジャ2修羅ノ章』ショー・コスギ、アーサー・ロバーツ、アシュリー・フェラーレ
1986年『ガン・ホー』マイケル・キートン、ゲディ・ワタナベ、ミミ・ロジャース
1986年『ベスト・キッド2』ラルフ・マッチオ、ノリユキ・パット・モリタ、タムリン・トミタ
1989年『悪魔の毒々モンスター 東京へ行く』桂木麻也子、安岡力也、関根勤
1989年『ブラック・レイン』マイケル・ダグラス、高倉健、松田優作
2003年『ロスト・イン・トランスレーション』ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン
2003年『キル・ビル Vol.1』ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、千葉真一
2003年『ラスト サムライ』トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之
2004年『THE JUON/呪怨』サラ・ミシェル・ゲラー、ビル・プルマン
2005年『SAYURI』チャン・ツィイー、渡辺謙、ミシェール・ヨー
2006年『バベル』ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、菊地凛子
2006年『硫黄島からの手紙渡辺謙二宮和也、加瀬亮
2010年『バイオハザードIV アフターライフ』ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター、ウェントワース・ミラー
2013年『47RONIN』キアヌ・リーブス、真田広之、浅野忠信
2016年『沈黙 -サイレンス-』アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、窪塚洋介
2020年『MINAMATA-ミナマタ-』ジョニー・デップ、真田広之、國村隼

お話を伺ったのは……松崎悠希(まつざきゆうき)さん●1981年宮崎県生まれ。英語劇団で7歳より舞台に出演。高校卒業後、アメリカで俳優になるため渡米。ホームレス経験など苦難を乗り越え、テレビ、舞台、ミュージカルなどに多数出演するように。在ハリウッドで活躍する日本人俳優の中心的人物。現、多様性が受け入れられた日本を舞台にした新しいコンセプトの探偵ドラマ『MOSAIC STREET』を制作中。

お話を伺ったのは……よしひろまさみちさん●1972年生まれ。映画ライター・編集。音楽誌、女性誌、情報誌などの編集部を経てフリーに。連載多数。日本テレビ系『スッキリ』で月1回レギュラーの映画紹介のほか、テレビ、ラジオなどでも映画の紹介を手がける。

《取材・文/我妻アヅ子》