場面によって選んで使う

 メガネ型拡大鏡とひと言でいってもさまざまで、眼鏡専門店のオリジナルブランドから100円均一までと幅広い商品が出回っている。加えて最近はLEDライト付きや軽量タイプ、紫外線カットにデザイン性など付加価値をつけた商品も登場。価格も100円台から数万円まであり、好みに合わせてあれこれ選べるのは大きな魅力だ。ただ、中には誤解を招く表記や注意書きが明記されていない商品もあるため、国民生活センターは、できるだけ購入前に試しがけをしてほしいと注意を促す。また、表示倍率の選び方に注意点が。

「あまり倍率が高いと視野が狭くなるので用途によっては使いにくい。例えば手元のものを見るくらいなら倍率が低めのほうが視野が広くなって、快適です」(川名先生)

 シーンに合わせた適切な倍率選びが重要になる。

 メガネ型拡大鏡はあくまでも手元のものを拡大して見るためのもの。長時間の使用や遠方を見るには適さず、かけたままの歩行は絶対に避けるべき。

「手紙やレストランのメニューなど、老眼鏡をかけていても見にくいときに、さっとかけて使うのがいいでしょう」(川名先生)

 もし目に違和感を感じた場合は、すぐに使用を中止し専門医に相談を。

「物が見えづらいという人はそもそも老眼鏡の度数が合っていなかったり、何か目の病気が隠れていることもある。放置していると進行してしまうので、何事も早めの対処が望ましいでしょう。

 きちんとピントが合う老眼鏡をかけていれば近くを見るぶんには支障がないはず。それでも見えないシーンに併用してメガネ型拡大鏡を使うといい。老眼鏡とメガネ型拡大鏡は違うものだという認識が広まってくれたらと思います」(川名先生)

 年を重ねるほど視力低下は深刻な問題。拡大鏡の役割を理解し、賢く利用したい。

老眼鏡、拡大鏡の違い

 加齢により衰えたピントを合わせるのが老眼鏡で、小さく見えづらいものを拡大するのがメガネ型拡大鏡。老眼の人は老眼鏡の上からメガネ型拡大鏡の重ねがけを。


お話を伺ったのは……川名啓介先生●1999年筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院、日製日立総合病院、総合病院土浦協同病院勤務を経て2006年から筑波大学大学院人間総合科学研究科講師。2009年千葉県松戸市でかわな眼科を開設。日本眼科学会認定眼科専門医医学博士

(取材・文/小野寺悦子)