かといって現実的すぎるとしんどい。だからSF風味で違う世界の物語になっているほうが気楽に見ることができる。その点で『日本沈没』はしんどくなさすぎず、ほどよく現実に対するガス抜きができて見やすい。こうなるともはや予算と技術をかけてすさまじい災害風景を製作するようなことはむしろしないほうがいい気さえしてくる。

 ほどよいSF風味+人間ドラマになった『日本沈没』は例えるなら『シン・ゴジラ』(2016年)+『半沢直樹』(2013年、2020年)である。ドラマの時代設定は近未来の2023年。地球温暖化阻止のためCO2削減を目的とする「COMSプロジェクト」は東山総理(仲村トオル)の肝いりの計画である。従事する環境省の官僚・天海(小栗旬)は物理学者・田所(香川照之)が力説するCOMSを引き金にして「関東沈没」が起こるという説に一抹の不安を覚える。

 ところが政府と密になってCOMSに関わる地球物理学の権威・世良教授(國村隼)はしらを切り、あちこちに手を回して隠蔽を図る。天海も危うく陥れられそうになる。だが1カ月以内に関東沈没が起こりうるという田所の分析をアメリカの物理学の権威が支持したため、にわかに状況は変わってくる。ここまでが第3回までの概要だ。

災害シミュレーションドラマの味わいが濃い

 令和の『日本沈没』は関東ひいては日本が沈没するという凄絶な情景について臨場感を伴って描くディザスターものというよりも災害シミュレーションドラマの味わいが濃い。室内での会話劇が多い点から映画『シン・ゴジラ』を意識したのではないかと指摘する声はあった。『シン・ゴジラ』は謎の巨大生物が日本に上陸した場合の対処法がよく練られた脚本で興味深く、多くの観客の心を捉えた。

 ただ意識はしたかもしれないが、同じ会議室ものでも政治家や各省庁に徹底的な取材を行ったうえで描かれた『シン・ゴジラ』の危機管理体制と比べると『日本沈没』はそこまでのリアリティーは今のところ見られない。官僚や学者やジャーナリストたちの言動はあくまでも誰もがわかる普遍的な感情を呼び起こすものでしかない。