どんな人でも焦らず諦めなければ、スーパーマンのように強く美しくなれると改めて思いました。人種・性別、年齢・価値観や障害の有無も関係なく、一人一人の違いを認め、多様な生き方に触れることで、個性や才能のある人たちが能力を発揮できる社会の実現を目指していくべきだと思います。日本もこうした“多様性”の捉え方が進んできているけれど、さまざまな物事の判断において、まだまだ旧態依然とした価値基準が残っているように感じます。これからのグローバル社会において、日本でもダイバーシティという考え方を標準化させていく必要性があると思います」

 滝川さんは有言実行の人だ。これからの夢は何だろうか?

「これからの夢は、最後にもう一度だけ俳優としてのステージに立つこと。そして自分の力で歩くことですね。『ボッチャのシリーズ化やボッチャのその後は?』いう話もあるのですが、僕自身は今のところ次の構想は考えていません。僕自身がこれから、もっとさまざまな体験をし、視野を広げて成長できたときには、自ずと伝えたい、描きたいという気持ちになると思います」

 夢を叶え、また新たな夢を描くのは簡単ではないはずだ。事故から現在までで、夢を支えてくれる出会いはあったのだろうか?

事故にあってたくさんの人の温かみに出会ったのはもちろんですが、事故にあって生活が一変してしまった『今の自分』との出会いですかね。今までは絶対に出会うことが出来なかったはずの自分がいました。今は、そんな今の僕から目を背けずに毎日自問自答して大切にしていこうと思います。学ぶことや今まで気づけなかった新しい境地に感動さえします」

 新しく出会った今の自分のことを、好きになったり嫌いになったりの繰り返しだと滝川さんは笑う。

「それでも、僕は……僕ですから。僕はまだまだ弱いです。だからこそ強くなりたい。たとえ人に笑われても、限界は自分で決めません。人の可能性は無限にあると思います。まだまだ続く僕の道を楽しみにしていてください」

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【写真】事故直後、のどを切開し人工呼吸器をつけていた滝川英治さん
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滝川英治(たきがわ・えいじ)
1979年、大阪府出身。俳優。「リポビタンD」のCMでデビュー後、ドラマ、映画、CM、バラエティー番組やミュージカル『テニスの王子様』などの舞台で幅広く活躍。
2017年、ドラマの撮影中に自転車事故に遭い脊髄損傷の大けがを負う。車いすでの生活となったが、懸命のリハビリでテレビ番組のMCとして仕事に復帰した。現在は、バラエティー番組『Smile again!~人生宝箱~』(BSスカパー!)の MCを務める。著書に『』(主婦と生活社)がある。